006
地下の扉を開いた二人は冷たい空気にごくりと息を飲む。
今すぐにでもモンスターが襲いかかってきそうな雰囲気だったが、それがアンデッドなら願ったり叶ったりだ。
だが、敵がどの程度の強さかは調べるか、戦ってみないと分からない。
「俺が前に出てるから、メイは後ろに下がってて」
手で制するユウトにメイは少し考え込んだが、何故彼がそんなことを言うのか分からなかった。
「何で?」
「何でって…俺が前衛職でメイか後衛職だからだよ」
「俺のステータスもう一回確認しろよ」
今度はユウトが怪訝な表情を浮かべ、ウィンドウからパーティーメンバーであるメイの詳細能力を確認する。
「STRが俺より高い…」
「獣人族だからな。後衛能力持ってても、基礎値が力高めだから前に出ても問題ねぇよ。寧ろ──」
にやりと意地悪くメイは口角を上げる。
「INTに振ってるユウト君が後ろの方がいいんじゃないかなぁ?」
わざとらしく声を甘くしてメイが笑うと、ユウトの頬が引き攣る。
「あ、あのね…それじゃ何の為に片手剣スキル取ったの、俺」
「冗談だって。ま、仲良く倒して行こうか。ほら、あそこ」
メイが指を差した先、暗い場所で光る赤い瞳。
体は爛れて腐食し、顔と体の区別がいまいち掴み辛い。
ゾンビと言うには、人の形はしていない。故にあれが噂のアンデッドというものだろう。
「あれが多分そうかも。ちょっと待ってて」
ユウトが目を細めると、瞳が濁り機械的なものに変わる。
暗視スコープで覗くような視界に変わり、次から次へと電子音と共に目の前のエネミーの情報が飛び込んできて、最後には『SEARCH』という文字が浮かび上がる。
そこで索敵が完了し、ユウトの瞳に光が戻る。
「うーん…俺、役に立ちそうにないかも」
「どういうことだ?」
「ああ、うん。今、情報送るね」
ウィンドウを呼び出し、手早く弄ると、メイにもエネミーデータが送られてくる。
それを眺めると、ユウトに視線を向ける。
「どんまい…」
「いや、どんまいじゃなくてね。俺の手札が一枚削られたってちょっと痛いかも」
憂鬱そうに肩を上げるメリケンジェスチャーをするユウトにメイは同情した。
何故ならば、敵であるアンデッドの弱点属性は光。耐性属性は闇。
ユウトが攻撃スキルとして取っているのは、片手剣以外では水魔法と闇魔法。
つまり、闇魔法は使えないということになる。手札が一枚減ったということはそういうことだ。
「でもさ、他のものは使えるってことだし二人でタコ殴りにすれば何とかなるだろ」
「まあ、もうひとつは使えるわけだからね。ひとまず、狩りますか。クエストクリアのために」
二人は互いに顔を見合わせ、不敵な笑みを浮かべると戦闘態勢の構えを取り、地面を蹴って敵へと襲い掛かった。