97 鶴を折ろう
「それじゃ、折り紙配るのでとりあえず一羽ずつ折ってください」
わ~、わ~、千羽鶴だ~。
いや、だから何って訳でもないけど。
忍です。
修学旅行でね、長崎行くんだけどそれで千羽鶴を折ろうって事になった……らしい。
聞いてなかったから分かんないや。
「篠~、折り紙変えて」
「いいけど……何で?」
「わたし黄色嫌い!」
小学生みたいな理由だなー。
「あそ。はい、赤でいい?」
「うん、ありがと~」
……そー言えば。
赤も黄色も千羽鶴で使っちゃいけないんじゃなかったっけ。
よく見れば純兄黒だし、なっくん金だし、清銀だし。
よく金銀取れたなぁ……。
オマケにあたし白じゃん。
使っちゃいけない色のオンパレードだっ!
まぁ、たいして関係ないらしいし、いっか。
「……忍、鶴の折り方ってどんなだったっけ?」
ありゃ、なっくん忘れたの?
「三角に半分折って、さらに半分折って……」
「あぁ、分かった、サンキュ」
コレで分かるの!?
最初の最初だけなのに!?
まぁいいや。
あたしもさっさとやろっと。
「…………篠」
「お前意外と不器用だったんだな」
「うっさい」
言われないと鶴って分かんないんだけど……。
羽がある事くらいしか。
「幼稚園の時はもっと酷かったぜ?」
これ以上!?
「だって羽があるかも分からな……ぎゃっ!?」
「うっさい」
しーちゃんが怒ったぁ!
「篠の怒りの鉄拳! 清君の後頭部にヒットしました~!」
「そーいや清のは?」
あ、机の上にあった……って、
「テメェは折ってもねぇじゃねぇか」
「オレは十五秒あれば出来るからな!」
早っ。
「じゃあやってみて~。よーい……」
桜、その手の中にあるストップウォッチは何処から出した!?
「スタート!」
1……2……3……
早っ!?
もう正方形に開いて潰すまで行っちゃった。
「……15!」
「セーフ」
……ぎりぎりで十五秒だったんだね。
「すげぇ!」
「何か凄い綺麗だし……」
この才能の一部を数学に割けたら……。
何も変わらない気がする。