96 岳と蛙
げこーっ、げこーっ
「はぁー」
「……純兄どーしよ。岳が暗い」
暗くて変で怖い。
蛙の声聞きながら溜息ついてんだけど。
忍でーす。
学校から帰って来たらなにやらこんな状態だった。
「ほっとけ」
「ほいな」
あれ? ほっといていいのか?
……まぁいいや。
「ねーちゃんとにーちゃんがひでぇ」
岳、君は一体何に話しかけてんの。
「どったの岳」
「あんなー、裏山オリエンテーリングあるじゃん?」
あぁ、小学の毎年の恒例行事。
学校の裏山登って、頂上でアメ貰って帰って来るだけなんだけどね。
……裏山には名前無いのかなぁ。
〇〇山とかって。裏山が名前?
「で、今日雨じゃん?」
「延期になった?」
今日だったんだー、って感じなんだけど。
「ううん。中止……はーっ」
岳……そんなに楽しみだったの。
まぁ、岳六年で最後だしねー。
小学ん時『雨学年』と呼ばれたあたし達でも晴れたのに。
五年の時の林間学校なんかは嵐だったけど。
「中止になったせいでな!?」
あれ? 続きがあるの?
「授業があったんだよ!」
そっちか!?
そっちなのか!?
「オマケに!」
まだあんの?
「教科書全部忘れた!」
うわ。それは悲しい。
「置き勉してねぇのか?」
純兄、小学生って普通置き勉しないんじゃない?
あたしはともかく。
「いつもしてたけど」
してんのかい。
「そのつもりで偶然うっかり持って帰っちまってさ……」
どのつもりだよ。
「とりあえずそんなこんなでオレは凄く落ち込んでるんだ!」
そんなに力いっぱい言わなくても。
「岳お兄ちゃん~」
「んあ?」
「見て見て~、捕まえたの~」
おー、蛙……。
「って、大丈夫かこの蛙!?」
何か凄いぐたーってしてるけど!?
いったいどーゆー捕まえ方をしたらこうなんの!?
捕まえたのが何分も前なら分かるけど……。
それならもっと前に持ってくるはずだし。
「あのね~、はーちゃんとイロイロ使ってギリギリまで追い詰めながら遊んでね~」
光、はーちゃん、それはあんまりだ。
「……ねーちゃん」
「ん?」
「オレ、何かちょっと元気になったわ」
何故に。
「この蛙の方がよっぽど大変だよな……うん。こんなことで落ち込むなー、オレ」
……やっぱ、今日の岳変だ。