94 理科の先生を怒らせるべからず
「はーい、それでは始めー。よーいどん!」
何故に理科の実験始めの合図がそれ?
忍でーす。
硫黄と鉄の化合の実験……を、始めたところ。
「はい忍、硫黄と鉄の混ぜ混ぜ頼んだ」
「頼まれた」
最初っから混ぜててくれたら楽なのになー。
いや、混ぜるだけだけどさ。
「せんせー、遅れましたっ」
ありゃ、清。
そーいや居なかったねぇ。
……斜め前の席の、それも結構うるさいほうの人間がいなかったのに気付かなかったあたしって?
「高崎君遅刻ー、はい、何してたの?」
そう言う事言いながらノートに書き込まれるのって見ててちょっと怖いよなー。
……と、前に清が言っていた。
「実は腹痛くて保健室に」
「清ー、嘘つくなよ? あはは」
おー、なっくんナイス。
清ー、嘘はいけないよぉ?
「う、実は頭が「はい嘘ぉ~」捻挫して「……体育なかった……」階段から落ち「高崎君、怒るよ?」あぅ」
ちなみに、最初が桜で次が水谷。最後は先生ね。
はい、清の言ったことをつなげてみよう! の巻。
『実は頭が捻挫して階段から落ちた』
……何か凄いことになってるな。
「くそっ! 白状します!」
「はい、何?」
「昨日の晩熱出した母の看病してて寝てしまって遅れました!!」
『嘘つけ!!』
それは学校そのものに遅刻した時の言い訳でしょうが!!
ぜったいにそれでは言い訳できないだろうけど!!
「高崎くぅん? 白状するんじゃ無かったのかなぁ~?」
「先生怖ぇ」
何か黒いオーラが見える。
そして超のつくにこにこ顔が怖すぎる!
「ど~しても君は硫化水素の臭いを嗅ぎたいようねぇ……。硫化鉄できた班!」
『はーい』
実はあたしたちはしっかりやってたのだ。
そしてさっきからゆで卵の白身の臭いをきつくしたよーな、教科書で言うと『腐った卵のような臭い』がしっかりと出てたり……。
うーん、一応知ってたけどこんなにきついとは思わなかった。
「ちょっと貸してね? ……さ~あ、高崎君、君の鼻の寿命はこれまでよ。ふふっ。塩酸を入れるから試験管の上にお鼻を持ってきなさい」
おー、ひどい罰だー……って!?
「先生ストップ!」
「それ危険だから!」
「だから実験の後で水入れなきゃいけないんでしょ!?」
「あらら、そうだったわねぇ。じゃあ薄めてない塩酸ぶっかけの刑で許して『余計危険になってるから!』」
この人大丈夫か!? よく教師になれたな!?
「じゃあクロロフォルムを嗅がせ『眠らせてどうする!?』じゃあ何ならいいのっ!」
いや、そこでキレられても……。
っていうかクロロフォルムなんてあるの?
「金魚丸のみの刑」
なっくん、何そのトンデモない刑。
「だめ! 金魚さんがかわいそうだと思わないの!?」
清の心配はせんのかい。
結局。
今回の実験で使った実験器具洗いの刑になりましたとさ。