88 食べましょー
「なぁっ!? ちょっ、ひでーよ! ずっこいだろ今の!」
「ふふふ、早い者勝ち。これがここのルールだ!」
「だ――――もう! にーちゃん! 何か言ってくれよ!」
「ん?」もむもむ
「なっ! にーちゃんその肉は何処で!?」
えーっと、これを一言でたとえるのなら……戦場?
忍でーす。
晩ご飯に、庭で肉とか色々焼いて食べてまーす。
うんまぁ、こういう時は90%の確率で海中一家も混ざるんだけど、今回もそのルール的なものには逆らわず、なっくん達もいるよ。
「お兄ちゃん! あたしのフランクフルト食べたでしょ!」
「んあ? 俺フランクフルト一本も食ってねぇんだけど」
「え!? じゃあ誰が……皆動かないで!!」
いや、動くなって。
動かなかったら出てくるわけじゃあるまいし。
「はーちゃんごめんね~、食べちゃった~」
「なーんだ。ひーちゃんだったら許すよ!」
何でなっくんには怒るのに光には怒らないの?
「純、その肉俺にもよこせ」
「断る」
あれ、なっくんいつの間にあっちに?
あたしも混ざろー。
「純兄その肉あたしにもよこせ!」
「テメェのは皿の上に乗ってんだろが」
しまった! バレた!!
いや、隠してなかったけどさ。
「そうそう、だから純の肉は俺のもの」
「馬鹿、俺の肉は俺のものだ」
おぉ、何か肉をめぐって小さすぎる争いが発生。
「わっ!?」
「あっ! 忍ちゃんごめん!」
あー、箸落ちちゃった。
「何してたの?」
「お母さんがよもぎ……じゃなかった、きゅうり食べなさーいって言ってくるから逃げた!」
よもぎときゅうりには何処に間違える要素が。
「ほら、春。少し位食べなさい」
「やだー!」
あ、行っちゃった。
……あ、箸の存在忘れてた!
「んー、落としちゃったけど三秒ルールで大丈夫だよね!」
『三秒どころか三十秒以上経ってるから』
うぅ、純兄となっくんにシンクロで突っ込まれた。
「はい、箸」
「ありがとー」
割り箸だから落としちゃった分は肉焼くところにぽい。
ざ・リサイクル!
うんうん、大切だよね。
「だーっ! 何で父さんはオレが取ろうとした奴片っ端から取ってくんだよ!」
「取ろうとしてたのかー、それは知らなかった」
「嘘つけ! オレが取ろうとして箸出したらその先の肉取るくせに!」
「んー? そーだっけー?」
口調が語ってます。
「お母さん~、焼きおにぎりするの~?」
「するよ~。一個だけ当たり作ろうか~」
『お~!』
…………おい。
当たりって……つまりハズレじゃ?
「さて~、この中に一つだけ当たりがあります~」
「誰があたりを引くことが出来るでしょーかっ!」
引きたくない当たりだね。
何が入ってんだか。
「ん~と~、お姉ちゃんから右回りね~」
「まだ食べちゃダメだよ~」
う……一番最初って一番迷うんじゃない?
当る確立は九分の一だから大丈夫!
…………ということにしておこう!
はい、ちなみに引く順番だけ言っとく、もとい書いとくね。
あたし
↓
なっくん
↓
はーちゃん
↓
光
↓
おかーさん
↓
秋ちゃん(春&夏母)
↓
冬くん(春&夏父)
↓
おとーさん
↓
純兄
ってな感じです。
……おとーさんだけ名前無いんだよねー。どうでもいいけど。
「じゃあ皆でせーのーで! ……で、食べるよ!」
ややこしいな、食べかけちゃったよ。
「せーのーで!」
ぱくっ!
『辛っ!?』
何で!? 何で皆辛いの!?
「ん? なんともねーじゃん」
「はう~、当たりは岳お兄ちゃんのようで~す~」
『は!?』
当たりは一個って……。
何も入ってないのが一個だけって事!?