80 夜道にて
たたたたたたた……
「じゅーんに、早くっ! 日が暮れちゃうよ!」
「いや、とっくに暮れてるから」
うん、そーだね。
真っ暗だし。
忍でーす。
さて、何故あたし達がこんな暗い道を走って……いや、純兄は歩いてるけど……いるかという。
おばーちゃんの所に行っていたから。
何故おばーちゃんの所に行っただけでこんなに暗くなってしまったかというと。
おばーちゃんに英語を教えてもらってたから。
何故おばーちゃんに英語を教わってたかというとー。
塾の先生をしてるおばーちゃんがあたし達を突然に教える気になって、何故か月曜と木曜がその日になってたから。
……はてなぁ。あたしも純兄も同意した覚えは無いんだけど。
まぁいいや。
「そんなことよりっ!」
「どんなことよりだよ」
……まぁ、それはともかく。
「純兄走ってよ!」
「ヤだ」
「晩ご飯できちゃってるかもしれないじゃん」
「ふぅん?」
あ、純兄時計出して確認。
何でポケットに入れてるのかなー。付ければいいのに。
あ、もしかして時計も没収大賞なのかな? 校則なんてちゃんと覚えてないから分からないけど。
「ん、まだ大丈夫。少なくとも後二十分は」
「……いま、八時ジャストなんだね」
たいてい八時半前に晩ご飯だし……。
「って、そんなことより走ろうよー」
「何でそんなに走りたがる」
「早く帰ったほうが安全でしょー。不審者出るかも」
「ほぉ?」
あ、何か馬鹿にされたような気がする。
「とりあえず、あたし走るからね」
よくよく考えればあたしだけ走ればよかったんじゃん。
「……あれ? 純兄結局走ってるんじゃん」
「テメェが走るからだろうが!」
あ、怒られた。
「何であたしが走ったら純兄が走るの? あ、分かった。か弱い女の子のあたしをほっとくのが出来ないんだ」
「何処にか弱い女の子が居ると」
うん、そういわれると思った。
「あー疲れた」
「早」
いや、全然疲れてないけどね。飽きただけ。
あと、どーやったら純兄が動くかとかが分かっ……。冗談です。純兄にらまないで。こあいから。
「う~ん、桜は見事に散ったねぇ。さくらんぼ食べたいなー」
「どーやったらそうなる」
「こーやったら」
「…………もういい」
あ、そ。
疲れた顔をされたのは何でだろう。