77 クッキー騒動
「ねぇ~、待ってよ~!」
「何で逃げるのっ!?」
そりゃーな!?
普通そんなもの食わされそうになったら逃げるだろ!?
何でクッキーがそんなに赤いんだよ!?
岳だっ!
今日、にーちゃんの誕生日でな!?
はーちゃんと光が何かクッキー作ってきたんだけど!
それの一部をオレとなっくんに食わそうとしてんだよ!
「岳ー、試しに食べてみなよ。こっちはおいしいよ?」
いや、ねーちゃん達食ってんの普通の色したクッキーだろ!?
さっきなっくんの方見てみたらネギが入ってんのが見えた。
っかしーなー。母さん達と一緒に作ったって聞いたんだけど。
……さては、
「母さん達もグルか!?」
「違うよ~」
「面白そうだから放っておいただけで、断じてグルじゃないわ」
それってグルじゃねーの!? 見て見ぬ振りはいけませーん!
「まぁ、俺には被害がねぇみてぇだからよしと言うことで」
良くねーっ! にーちゃんずっこい!
「辛っ!?」
『え?』
ねーちゃんが食べた奴が辛い!?
ま、まさか……大皿においてあった奴の中にもハズレが!?
おめーら、もっと安心して食えるものは作れねーのか!?
「と・に・か・く! お兄ちゃん達素直に食べなさーいっ!!」
『断る!!』
断らない奴が居るのならここに連れて来い!!
……いや、探せばいるか。マゾとか。前言撤回で。
「ね~、コレさえ食べればあっちも食べられるんだよ~?」
「あっちも大概危険だろうが!」
激しく同意!
「岳お兄ちゃ~ん~? 食べなかったら岳お兄ちゃんのお誕生日の時も同じもの作るよ~? 当たり無しで~」
勘弁してくれ……。
「……純兄と同い年の時ってきっちり一ヶ月しかない」
いや、一ヶ月と一日だぜー。
って、ねーちゃん助けてくれる気はねーの!?
にーちゃんも何かクリスマスツリーかじってるし!
ちょっと実験。
「ねーちゃんにーちゃんヘルプ!」
『ヤだ』
やっぱり!
頼りがいと言うかなんと言うかそれが欠けた兄姉め!
「……たまには助けてやれよ」
「純兄こそ。むしろ純兄にそのまま返すよ」
何でこう思ったときだけ!!
「じゃ、テメェは岳で俺は夏……って、夏居ねぇし」
あれ?
さっきまでちゃんと逃げてたのに。
「ひーちゃんっ! お兄ちゃんが隠れたっ!」
……あ、その手があったか。
「……テメェの家の、テレビ台と壁の隙間」
「え?」
「そこ探してみろ」
「分かった!」
にーちゃん! 何て殺生な!
そんなところで見つかったら逃げられねーじゃん!
「えい~」
あっ!?
もぐもぐ、ごっくん
「辛っ!」
多分これは七味唐辛子だ! のど痛ぇっ!
「はい水」
サンキューねーちゃん!
追いかけられてる時に助けてくれればもっと嬉しかったぜ!
オマケ
「居ない!」
「残~念、こっちだ!」
上から声がした……。オバケ!? イヤーッ!!
って、違うよね、お兄ちゃんの声だったし。
……あ、テレビ台と壁に手と足使って登ってる……。
大した隙間無いのに。すごーい。
……クッキーが口に届かない!
よし、この作戦で行こう!
3時間後
「お兄ちゃん、その体制キツクない?」
「お・ま・え・なぁ……」
必殺、疲れさせておろす攻撃♪