76 これでもクッキーを作っているのです
「待ちなさい。貴方達は一体何を作るつもり?」
『クッキーだよ(~)?』
変ね。私の目がおかしくなったのかしら。
秋よ。
家で凛とお喋りしてたら妹二人がクッキーの作りかたを聞きに来たのね。
それで、凛が『変なものを入れない』という条件付で何故か私まで教えることになったのだけど……。
この子達のそろえた材料の中にどう見ても、
ど う 見 て も おかしなものが入っているのだけど。
この子達凛の言ってたこと聞いてたのかしら?
からしでしょ、しょうがでしょ、ネギに蜂の子。
え、蜂の子? 何処から持ってきたの?
切りがないから切るけどコレのほかにも色々。
……よく集まったわね。
そんなことより。
「凛、変なものを禁止したのは貴方じゃなかった?
何便乗してるのよ」
「だって~」
だってじゃないわよ。
「誰かを引っ掛けるためのハズレに使うって言うんだもの~。
楽しそうだったから乗っちゃった~♪」
単純……。
「大体誰かって誰よ」
「分からないよ! 無差別殺人だもん!!」
春、殺さないでちょうだい。
「違うよ~。無差別引っ掛けだよ~」
「…………それならまぁ……楽しそうだし、いいわよ」
止めるのはやめにするわ。
だって、コレを始めたこの子達が引っかかる所を見てみたいもの。
いっつも引っ掛けている方だから。
……ついでに、純もね。あの子見事に引っかからないもの。
「よ~し~! 型抜きしよう~!」
え? もう?
生地できてるし……。って、ちょっと待ちなさい。
「それ、ちゃんと寝かせた?」
「寝かせる? これに布団なんかかけたら、自分が寝るとき気持ち悪いよ!」
そうじゃなくてね……。
「あ~! 忘れてた~! 秋ちゃんくっしょふ~」
濁点が抜けてるわよ。『゛』が。あとカタカナね、それは。
二時間後
「よ~し~! 今度こそ型抜き~!」
「肩たたき~?」
どうやったらそう聞き間違えるのよ。
「あれ~、光やってくれるの~?」
「ウチもやるよ!」
何がしたいの貴方達は。私もやってほしいけど。
「型抜きするんじゃなかったの?」
『あぁ(~)!』
『あぁ』じゃないわよ……。
「誰か、コレに挟むネギ等等切っといた方が効率的だよね!」
それを言いながら私に視線を送るのは私に『やれ』と?
「口で言いなさいそういうことは」
「はーい。ねぎ切りお願いしまーす!」
……スーパーとかでは見かけないわね? このねぎ。
「それね~。いつか光たちがカレーを作ったときに発掘した、芽の生えた玉ねぎを庭で育てて取れたんだよ~」
…………。何から突っ込めばいいのかしら。
発掘したことについて? 庭で育てたことについて? コレが安全かということについて?
……まぁ、コレくらいの量なら、大丈夫よ、ね?
「見てみて! 季節外れ!」
クリスマスツリーって……。ホント、季節外れもいいところね。
「こっちは季節ピッタリだよ~。ほら~、桜~!」
もう殆ど散っちゃってるけれどね。
「ねぇひーちゃん、その桜ちょっといがんでないかな?」
「え~? 本当だ~! 何で~? 何で~?」
まず、型がいがんでるのだけど。
「あ~、その型ね~。かなり前なんだけど床に落として踏んじゃったの~」
凛……直そうとか言う気はなかったのかしら?
「よ~し! じゃあハズレを作っていこう!」
丁度、ねぎも切れたしね。
切ってから言うのも何だけど本当に大丈夫かしら、これ。
「え~っと~、これは岳お兄ちゃん用~」
「これ、お兄ちゃん用ね!」
……あら? 数十数行前に『無差別』と言ったわよね?
「さ~、皆よう~」
……あぁ、岳と夏はとりあえず絶対引っかかるようにしたかったのね……。