70 子供の相手とは大変なのである
「待てー!」
ぴたっ
「わぁっ!」
あれ?
待てって言われたから止まったのに。
「急に止まるな!」
「待てって言われたから止まったのに!」
忍でーす。
いや~、あのね?
近所の二年生の子が友達×5を連れて遊びに来たんだけどね?
あたしは中学生虐待を受けてるのよ。
なんで!?
あたし一人で六人も相手にできるわけ……あるんだけど。
って言うか現在進行形でやってるんだけど。
ほら、小学校低学年の子が相手なんだよ? 蹴ったり殴ったり出来ないでしょ!?
だから適当にこけさせるor逃げるしか方法が無いわけであって。
あたしはまだ制服を着替えていないのであって。
とてつもなくやりにくい。
「にいちゃん行くぞ!」
「誰がにいちゃんだ!? スカートはいてるでしょ!?」
制服以外には持ってないけど。
「あ、じゃあオカマ?」
「何でそうなる訳!?」
せめて着替えさせて欲しい。
スカートって広がるから動きにくいんだよ!
とりあえず部屋まで逃げ込めば後は何とかなる!
……と考えたあたしが馬鹿だった。
あたしと光の部屋には鍵がない=勝手に入ってこれる。
着替えられるじょーたいじゃないでしょーが!
はぁ~。
とりあえずブレザーとスカートだけ脱いどこ。
スカートの下に体操服のズボンはいといてよかったよ。
「えいえいえいえいえいえいえいえい!」
はぁ~。無防備な状態で何故こんなに殴られないといけないのだろうかー。
ぬいぐるみで、なだけましだけど。
「こら、女の子が乱暴なんかしちゃいけません!
……とするとやってるあたしって?」
どうしよう。自分で言っといてちょっと悲しくなった。
女の子が一人混じってたんだよね。
「よー……って、なんだ。忍まだ着替えてねぇの? いや、どっちかっつーと着替え途中?」
まぁたなっくん不法侵入してー。
でも今は!
「なっくん、丁度良かった!」
「丁度悪い所に来たようだから俺帰るな」
「酷い!」
しかも本当に帰っちゃうし! ベランダから。
「忍ー、無事か?」
「無事だけど手伝ってよ純兄!」
すがり付いて来られるのって暑いんだよ!
あと地味に殴られるの痛いし。
「必殺!」
うん?
空気入れポンプのホース?
何で口に銜えてるの?
「ほーふこうれき(ホース攻撃)!」
ふーっ
……………………終わり?
「何にもなってないから」
「てへっ☆」
おーい。
……あー、のど渇いた。水飲みたい。
となったら一階に下りないと。
「あっ! 逃げたー!」
ダッシュ!
「階段下りるの早っ!?」
ふふふ、何しろ毎回駆け下りてるからね。慣れたのだ。
皆は真似しないでねー。うちの階段急だからー。
って、思うだけ。
言ってる余裕無いんだもん!
こっぷー。
「あ、あそこ!」
……二年生の皆さん、下りるの早いねー。
「水くらい飲まして?」
『ダメー!』
何で!? 酷いよ!? 人権無視ですか!?
……二年生じゃまだ分からないかな?
「じゅーんにー! へるぷみぃ!」
「断る」
酷いよ!
しかもいつの間に一階に!?
「もっかい言うよ? 水飲ませて」
『ダメー』
残念ながらもう飲んでます。ごくごく。
うん、のど乾いてる時が一番おいし。
「あっつー」
しかし体温はすぐには下がらない。
「カッターのボタン開けろよ。第一まで閉めるから暑いんだろうが」
あ、その手があったか。
「ありがと、純兄」
「どういたしまして。よく気付かなかったな」
あ、何か今ものすごく馬鹿にされたような気がする。
「それーっ」
「のぁっ!?」
また来たーっ!
「逃げるっ」
『逃げるなー!』
「逃げるっ! 大事なことなので二回言いました」
「何処がどう大事なことなのか五十文字以上で説明して欲しい」
純兄が何か言ってるけど無視!
今はとにかく身の安全をはかるのだーッ!