69 ワークに突っ込んでみよう! 屁理屈で
「……光、光、ちょっとこれ見ろよ」
「どれ~?」
にーちゃんが机の上に置いてた英語のワーク。
どーみても不思議なんだよなー。
岳だ!
「ほらほら、ここ。おかしーだろ!?」
「あいきゃんとりーどいんぐりっしゅ~」
言えてるじゃねーか。どこで覚えた?
「とりあえず英語で何か読むように言われた時はこう言っとけ~、ってお姉ちゃんが言ってたよ~」
「いや、オレは英語なんてちんぷんかんぷん異国語の様だから見てねーんだけど」
「……岳お兄ちゃん~」
あん?
「英語は異国語でしょ~?」
……あ゛。そっか。
「標準語だ!」
ということにしておこう! 間違ってはいない筈。
「で~? なんて書いてあるの~?」
「『お母さん、次に何を手伝いましょうか』」
隣に和約が書いてあったからこそ読めたのだ!
おかしーだろ!?
いや、和約が書いてあったことじゃなくて、内容の方!
「こんなことをこんな言い方で言う子どもがいる筈が無い!」
「あ~、確かに~。『じょうりゅうかいきゅう』~? とか位だよね~」
日本にそんなの居んのか?
「あとここ!」
『来週あなたは十五歳になります』
「ここ~? どうおかしいの~?」
だって、だってな!?
「これが書かれた時に来週なら、今頃数年前とかになってる筈だろ!?」
作られてからそこそこ経ってるワークみてーだし。
「……岳お兄ちゃん~、そこはね~、アニメとかの登場人物が年を取らないのと同じ事だよ~」
そーなのか?
「ドラ○もんのの○太くんなんてね~、ちゃぁんと誕生日やってるのにずぅ~っと五年生のまんまなんだよ~?」
あー……。いつ元の年に戻ってるんだろうな、あれ。
「あ、あとあとあと!」
「そんなに言わなくても聞こえてるよ~」
んなこたー、わーっとる。
『わたしは医者になるつもりです』
「なれたかどーか、もんの凄く気になっちまうじゃねーか!」
「なれなかったんだよ~」
「おい!?」
にっこり笑ってんな事をゆーな!
「え~? じゃあなれた~」
じゃあって、おい。
「そーゆーことじゃなく「じゃあどう言う事なの~?」……言い返せない」
なんだろー、この敗北感というかなんというか。
「なれなかったんじゃないのならなれたしか選択肢ないじゃない~」
ごもっともでございますです、はい。
はぁ~、妹に負けた。
次っ!
立ち直りが早いのが我の……えー……何だっけ。
次!
『彼を手伝って下さい』
「自分が行けよ! なぁ!?」
「あ~、そっちなの~?」
うん?
「てっきり~、『彼って誰だ!?』かと思っちゃった~」
確かに。
「彼って誰だ!?」