66 迷っちゃった校舎内
「ひーちゃん、何して遊ぶ?」
「ん~……そうだね~、あ~、外でドッチボールやってるみたいだよ~」
ドッチボール!? いーね、いーね!
ウチ、ドッチ大好き!
はーちゃんこと春でーっす!
今はお昼休み。何して遊ぶか考えてたの!
「ひーちゃん、行こっ!」
「へ~? ……うん~!」
目指すは運動場!
…………の筈が。
「ここ何処!?」
迷子? 違う! ちょっと迷っただけ!
……迷子か。
だってだって!ウチはこの学校に転校したてなんだもん!
まだ二日目なんだから迷子になって何が悪いの!
「ひーちゃーん……? あれ!? いない!?」
あ……そっか、早く行きたかったから本気で走っちゃって……。
はぐれちゃったんだね。ドンマイウチ。
いや、『気にするな』じゃないよ!
教室にも帰れない!
落着けウチ。まずは現状把握……は、迷子で、現在地把握しないと。
どーやって?
ここ地図ないよ!
しょーがない。周りに何があるか見てみよう。
前:廊下
後:廊下
左:トイレ(何か臭い)
右:美術室
……分からないよ!
ここのトイレ使わないし!
美術室なんて使ったことあるわけないし!
うー……ん、誰か居たりしないかなぁ。
ドアの上のほうは曇ガラスじゃないし。
「よいしょっと……」
誰も居なーい。
接骨像とか気味悪いよ。
……あれ、石膏像だっけ? まぁいいや。
あ、棚の上には絵が乗ってる。
「…………きゃあぁぁぁぁぁ!!」
モナリザ!? びっくりした。怖いよ!!
模写かな、さっきの……。
「何?」「どしたの?」「幽霊とか!」「んなアホな……」
あ、人が集まってる……。
「あれ? はーちゃんじゃねーの。何してんだ?」
「あ、岳くん……。なんでもないよ。ちょっと美術室の中のモナリザにびっくりしただけ!」
ところで岳くん、後ろに息切らした人が居るけどそれは誰なの?
「何だ、モナリザか……モナリザ!?」
「えっ!? 何!?」
「この学校にモナリザ何て置いてねーよ!?」
……えええええええ!!
じゃあさっきの何!? なんなの!?
「馬鹿。おいてあるよ。模写」
「お前が知らないだけだろうが……はぁっ」
「そうだよ」
なんだ……びっくりした。
突然人ごみの中から出てきた人たちもびっくりしたけど。
「ばーか、オレだってそれくらい知ってた! 忘れてただけだ!」
「……覚えてなかったなら同じじゃね?」
同意しまーす!
「あ、それよりはーちゃん、その女子トイレ気をつけろよー」
トイレに気をつける? どういうこと!?
「花〇さんが出るんだってさ!」
…………トイレの花〇さん!?
「きゃあああああああああああああ!!」