59 仕分け、中?
「ただいまー」
……親父か。
確か野草採りに行ってたっけ。
純だ。
「純ー、ちょっと仕分け手伝って」
「ヤだ」
めんどくせぇ。
「そー言わないで。数多いんだし。どーせ暇だろ」
断定?
ま、事実暇だけど。
「分ぁったよ……」
「スギナはこっち。よもぎはこっちでカラシナはこっち、ノビルはこっちね」
「へいへい……」
しっかし、量すげぇな。
スーパーの袋四袋分位あるんじゃねぇか?
「えーっと、よもぎ餅の作りかたはー……んぎゃ!?」
「俺にやらせといて親父がやらねぇのはどういう事だ?」
「えー、よもぎ餅の作りかた調べてあげてるんじゃん」
俺は頼んでねぇ。
「大体よもぎ餅が好きなのは親父だけだろ」
「いや、だってね? たまたま会った人に『よもぎそんなに摘んでどうするんですか』って聞かれて『乾燥させて一年分貯めておくんです』って答えたら……」
貯めて、よもぎ茶にするんだろ?
んな物殆ど誰も飲んでねぇじゃねぇか……。
「そしたら『あー、そっちですか。私は湯がいてよもぎ餅とかにしますねぇ』って。別れてしばらくしてから『……湯がいてって言ってたよなぁ……』って思って」
よもぎ茶は煎じてるからな。
「あの人はお湯の方を捨てて、俺は葉っぱの方を捨てて……」
「どっちが不自然かと聞かれたら明らかに親父の方だな」
「でしょ? だからよもぎ餅の作りかたを調べておこうと思って」
……調べて、作るのが面倒だからって結局何もしないんじゃねぇか?
「……って、それを俺に仕分け押付ける理由にすんじゃねぇ」
ばしっ
「親を殴るとはなんちゅー親不孝もんだ!」
「知った事か」
押付けた親父が悪い。
「ちぇっ。忍と純はよもぎ餅嫌いだから口に押し込んでやろうと思ったのに」
「それが本音か」
「ななななぁ~んの事かな~あ?」
全部口から出てた……気付いてなかったのか?
「あ、そうそうもぐらの巣があったよ」
話思い切り変えやがった。
「で? もぐら掘ったのか?」
「ないない。おにぎり持って行って穴にころころ転がしてたらどうする?」
おむすびころりん?
あれで穴の中に居たのはもぐらじゃなくて鼠だろ。
「どうもしねぇよ。まず声が聞こえてくる訳ねぇだろ」
「声が聞こえてくるまでやってたらどうする?」
はぁ?
「単なる馬鹿だろ」
「単なる馬鹿だったらどうする?」
何がしたいんだか。
……とりあえず言い返して欲しいのか?
「単なる馬鹿だったら銀行員にはなれない」
「…………ちぃ」
勝った。