58 お霊さん
「へーわだねぇ」
お日様ぽかぽか、風はそよそよ。
おっさんうじうじ。
……うん?
『……ぶつぶつ、ぶつぶつ……』
うーん……。
半透明だし、幽霊なのかな?
『ぶつぶつぶつぶつ、ぶつぶつぶつぶつ』
ぶつぶつ言いながらプランターの草むしってるけど。
……いや、実態がないからむしれてないけどさ。
『ぶーつぶつぶつぶつ、ぶつぶつ……』
……うん!
こういうのは相手にしないに限る!
純兄がこういうのに迷惑してるのはよく見てたからね。
「さて、光合成終わり!」
いや、あたし植物じゃないから光合成では無いけど。
さて、下手に関わらないためにも家の中に戻ろー……。
『見えてるじゃろ? 見えてるよな!? どうしたのって言ってくれてもいいじゃろ!?』
あー……っと……。
めっかったー!
「おじさん、小さいね」
目測145センチ
『ほっとけ!!』
「うん、分かった」
さて、望みどおりほっといてあげましょうか。
『待て! 何処に行く!』
「だって今ほっとけって言われたから」
『話くらい聞いてくれ!』
「何の? 『わしの!』ヤだ『聞け!』聞いて欲しいなら聞いて欲しいと『言った!!』あ、そか。うん、それじゃ『待てと言うに!』ヤだってば『お前に拒否権はな』あるもーん」
家に入って、窓閉めて、鍵かけて。
これでよし!
『待~て~』
するっ
あー……しまった。
幽霊はドアが閉まってようが壁があろうがすり抜けられるんだっけ。
「てい」
『んぎゃ!?』
対象に霊力がある程度あると無理らしいけど。
だからあたし達は幽霊を殴れるのだ!
『年寄りをもっといたわれ!』
「おじーさん年いくつ」
『わしは爺ではない!』
年寄りなのか年寄りじゃないのかどっちなの!?
「そーですか。どっちでもいいから成仏しなさい」
『いやじゃいやじゃぁ~!』
駄々っ子かお前は!?
「知り合いの死神でも呼んで差し上げましょうか」
呼べないけど。
『し に が み ? あ、あの死んだ者の心臓を再び貫きにくるあれか!? あれでも成仏できるらしいが勘弁してくれ!』
へぇ~、そんな風にするの。
「大人しく成仏したら呼ばないであげるよ」
『いーやーじゃー! わしゃ高所恐怖症なんじゃ! 五階以上にはのぼれんのじゃー!』
高所恐怖症と成仏とどんな関係があるの。
「知ったことか、成仏しなさい」
『高所恐怖症のわしに天へ上れと!? 鬼か貴様!?』
鬼じゃないよ、人間だよ。
「……成仏の仕方教えてくれるかなー?」
『なんじゃ! 知らんのか!』
いや普通の人は知らないと思いますが。
『天高く上るのじゃ! 高く、高く、たか――くな! 大気圏を過ぎる位まで』
へぇ~……って、あれ?
「それじゃあ宇宙に行った人全員成仏しちゃうじゃん」
『いや、わしはよく知らんが霊体以外は大丈夫らしい』
ふーん。
「何処で知ったのそんな事」
『……さぁ?』
死んだら勝手に分かるようになるのかな?
死神のこととかも含めて。
「へぇ。分かった。ありがとう。頑張って上ってね」
『鬼か!?』
「下を見なかったらいいだけでしょ?」
ぽんっ
『その手があったか!』
気付いてなかったの!?
『ありがとな! それじゃ!』
「うん、ばいばーい」
おじさん? おじーさん? どっちでもいいか、は天高く上っていきました。
……あれ、何か聞いて欲しかったんじゃ無かったの?