56 えいぷりる
「ね~お姉ちゃん~」
「ん~?」
「バナナの皮で滑って転ぶ人って本当に居るんだね~」
忍です。
暇で暇でしょうがなかった所に光がこんなことを言ってきました。
「バナナの皮で滑って転ぶ人か~。小学の時は給食でバナナが出るたびに大量発生してたな」
わざっわざ教室の後ろにバナナの皮を蛸みたいに置いてその上を走るんだよ。
男子の半分はやってたんじゃないかなー。
純兄はやってないけど。ノリの悪いやつめ。
「そうじゃなくてね~、学校から帰る時に~」
ちなみに今日は離任式でした。あしからず。
「補導のど真ん中にバナナの皮が落ちてたのね~、それで~、ジョギングしてた人が滑って転んで頭打って救急車で運ばれちゃったんだよ~」
ジョギングして滑って転んで頭打って救急車で運ばれた~?
忙しい人だね~。流石現代社会?
違うか。
「嘘だけど~」
「嘘!?」
何とまあ現実味溢れた……。
全ッ然現実味ないじゃん。
「今日はエイプリルフールだも~ん~。岳お兄ちゃんも引っかかったんだよ~」
あ~……そう言えばさっき岳が『翔も修也も古閑も引っかかったのに何で光は引っかからねーんだー! しかも逆に引っ掛けられるとはこれいかに!?』って叫んでたなー。
五月蝿いの何の。
「純お兄ちゃんも引っかかるかな~。試してみよ~っと~♪」
いやー、純兄は引っかからないでしょ。
「さぁ、どーだろな?」
「突然出てきて心を読むな!」
肘打ちっ!
ゴン
「いや……声に出てたから」
「嘘っ!?」
「ピンポン」
膝蹴りっ!
ドスッ
「乱暴だなぁ……意外と痛ぇんだからな?」
「心を読んだお前が悪い!」
「いや、そんな技ないから。あっても俺出来ねぇから」
……あれ? じゃ、何で……
「忍ならそう考えると思った」
幼馴染恐るべし。
「ねーちゃんねーちゃん! 今は馬鹿が増える季節だって誰か言ってたけど、ホントだな!!」
「ん? 何で?」
「頭に花が咲いてる人がいっぱいだ! 目の前にも……」
かかと落としっ!
ゴスッ
「って嘘を考えた……ねーちゃんも引っかかったな!」
我が身を犠牲にした嘘!?
岳は嘘にどんな執念が……。
「忍ちゃん!」
あ、はーちゃん。
まさかはーちゃんも嘘を言いにわざわざ?
「家の片付け、終わったよ!」
あ、報告だったか。
「そっかー。良かったね」
「お兄ちゃんの部屋だけしてないけど!」
「よしなっくん、家に帰って片付けしといで」
「えー」
ぐいぐいぐいぐい
なっくんを押してベランダに。
理由? なっくんはいっつもベランダから入ってくるから。
完全なる不法侵入だよね。
「ほらほらーお兄ちゃん、早く片づけした方がいいよー。お母さんの雷がずどーんするから」
起こるとこあい、春夏母。
「ちぇっ」
「はーい舌打ちしなーい。じゃねっ! 忍ちゃん!」
「ほいほーい」
行っちゃった。
「お姉ちゃん~。純お兄ちゃんも引っかかったよ!」
「嘘ッ!?」
「嘘~」
……あたし、嘘と言う嘘には全て引っかかってるんだけど。
「……しーねぇ」「ひぃねぇー」
あ、天に斬。
……誰かにエイプリルフールの事吹き込まれて引っ掛けに来たんじゃあるまいな。
「どうしたの~?」
『お世話になりました』
……………………は?
「ほぇ~?」
「学校がね、明日から始まるんだ」
「……学校、全寮制」
……ふむ、こーゆー嘘か。
「だから今日のうちに行っとかないと間に合わないから……」
「はーいストップ。嘘でしょ」
「……えいぷりるふーるでも、コレ本と」
…………ありゃ?
「ねーちゃんねーちゃんねーちゃん! 剣がな! 行っちまうって!!」
あれれ~?
ほんと?
「ね~、学校って、お休み無いの~?」
「……春休み、夏休み、秋休み、冬休みなら」
秋休みってあるんだ~……。
「その時は~、帰って来るよね~?」
ぱちくり。
そんな効果音がピッタリだな。
「“帰って”来て、いいのか?」
「ったりめーだ! っつか帰って来い! 絶てーだぞ!!」
うんうん。
「ここはあんたらの家でしょーが」
『……うん!』
わぁ、初めて斬の笑顔見た。
いや、おっそろしい薬持って嬉々としてるのは見たことあるけどさ……。
あれは黒っぽい紫のオーラが見えるから笑顔に見えない。
「純兄には?」
「もう言ったよ。同じ事、言ってくれた!」
にぱー、こんな効果音つきそう。
「そか」
『行ってきます!』
『行ってらっしゃーい(~)!』
桜はまだ咲いてないけど。
あの三人がちっちゃな桜の花びらみたいに見えました。
と言う訳で死神トリオ、しばらく退場です。
次出てくるのは夏休みかな。覚えていますように(笑)
なにしろ三歩歩いたら忘れるもので……(鶏?)