55 お
「おみかん! おふとん! おしんぶん!!」
「……『お』はいらない」
「いいの!」
いいんだ?
岳でーい。
今菜美が遊びに来てんだ。
神谷はスイミングだって。
最近何でも『お』を付けるのが菜美のマイブームらしい。
「天ちゃん~、菜美ちゃんって斬くん見えてるね~」
「小さい子は皆見えるよ。大きくなったら見えなくなっちゃうのが普通だけど」
「そっか~、純お兄ちゃんは普通じゃないんだね~」
ここににーちゃんが居なくて良かった。
あ、にーちゃんはねーちゃんと一緒になっくんとはーちゃんとこの手伝いに行ってんだ。
オレ? めんどくさかったから行かなかった!
光は菜美の面倒見るためな。
「おぱしょこん! おりんご! お……えーと、えーと……おはこ!」
「……十八番?」
菜美が言ってるのは『お箱』だと思うけど。
「菜美ー、それは箱じゃなくてプリンターだぜ」
「おぷいんた? おぷいん! おぷいんたべたいなー」
おぷいん? おぷいん……おぷりん?
プリンか!!
わかるとちょっと嬉しい。
「岳にぃ、連想ゲーム化してね?」
「してるな、うん」
プリンターからプリンになった。
「たべたいなーたべたいなー、おたべたいなー」
「……だから、『お』はいらない」
「こまかえこといってゆとはげゆよ?」
菜美……何処で覚えた、そんな言葉。
「……じゃあ天はもうハゲ「どういう意味!?」……そのままの意味」
斬……確かに、確かに細かい事言ってるのは天だなぁ。
「天ちゃんはまだまだハゲないよ~」
「……ひぃねぇ、それって将来ハゲるって意味?」
「はぅ~っ!? そんなつもりじゃ~」
そんなつもりだったんだろ。
目が笑ってるぜー。
「おいかり? おちちゅいてー、おそらたん」
ついに人の名前にまで『お』を付けるようになったか。
でも天は『お』を付けてもあんま違和感ねーな。
お空って言うし。
「ほらほら~、おちついてー、お天たん」
「お前が言うな!」
みしっ
おー、毎度の事ながら痛そー……。
天の鎌ってしっかり研いであるから先っぽもすっごく尖ってたし。
「酷い」
「おいたい? おつゆぎたん」
「天の発音はちゃんとしてたってのにー。オレは剣だい、つゆぎじゃねーよー」
剣ー、床にのの字を書くなー。
キノコを生やすなー。
食べられるキノコならOK。
……しまった。
奈津と夏って読み方が同じだ……。
奈津の存在を忘れてた訳じゃないですよ!
えぇ、ちょっと覚えてなかっただけです! ……あれ?