54 お雛様の過去
『……何で俺まで……』
「純兄ー、なっくん、岳、それ五回目だよ」
「そうだよっ! いい加減あきらめてちゃんとやってよー!」
「うんうん~」
忍でーす。
今皆で雛人形の片づけをしてるんだ。
何かほんっとに今更だよね。
確か出したのは二月の終わり、一ヶ月以上出しっぱなしだったんだなー。
「もういっそ年中出しっぱでよくね?」
「または最初から出さないか」
それじゃ雛人形ある意味無いでしょ。
「雛人形を片付けるのが遅いとお嫁に行くのが遅くなるんだよ~?」
「そーだよっ! 忍ちゃんとひーちゃんがお嫁に行くのがお婆ちゃんになってからになっちゃたらどうすんの!」
それはいくらなんでも遅すぎると思うんだけど、はーちゃん?
「光はともかく、忍なら年中出しっぱでもいいじゃねぇか」
「ん? 妹はやらんぞーって?」
光の立場は。
「いや、忍を貰おうなんて奴いねぇだろと思って」
「純兄酷っ!!」
なっくん、大爆笑。
あたしは全然面白くないんだけど?
「しっかしなー、誰だー? 七段飾りがいいなんて言った奴」
「は~い~」
犯人はすぐに名乗り出た。
このお雛様おばーちゃんに貰ったんだよね、光が駄々こねて。
それでくれるおばーちゃんもおばーちゃんだけど。
「あ、コイツの首、紅いのが付いてる」
「キャ――――――ッ!! 血!? 血なの!?」
はーちゃん……悲鳴が耳に響きます。
「人形が血ぃ出すわけねぇじゃん。ペンのインクだよ」
「なんだぁ、良かった。でも何でそんなところに……」
『………………』
ねぇ、純兄となっくんが視線を逸らしたような気がするんだけど。
「純お兄ちゃ~ん~?」「お兄ちゃ~ん?」
あ、気がしたんじゃなくて本当に逸らしてた。
「純お兄ちゃん達がやったんだ~!」
「ひっどーい! ウチもよく見てたのに!!」
『その時のお話、あるよね(~)!?』
二人とも、顔近いよ。
その笑顔がとっても、素晴らしく怖いよ。
ん? あたしは怒らないのかって?
あたしは乙女じゃないもーん、雛人形そこまで大事にしてないもーん。
……お雛様祟らないで。
「分かった分かった!! 分かったから、顔近い!」
五年前……。
「じゅんおにいちゃん~、おひなさまかざるのてつだって~!」
「おにいちゃんもだよ!」
『えー』
『えーじゃない! おひなまつりはおんなのこのいうこときくんだよ(~)!!』
光、はーちゃん、当時四歳。
言い出したらなかなかしつっこいお年頃。
「ちぇっ、……あれ、赤のサインペンめっけ」
「本とだーっ! ……ね、ね、ちょっとイタズラ♪」
「気付かれねーよな、多分」
忍、純、夏、当時九歳。
いたずら真っ盛り。
ちょっとしたいたずら心で人形の一つの首に血の落書き。
子どもとは案外グロい落書きが好きなのだ。
そして気付かれぬまま(何故!?)……
先程自爆。
……あれっ!?
あたしも共犯!?
「お姉ちゃ~ん~?」「忍ちゃ~ん?」
キャーッ!?