53 コンビ二にて
「なっくん何で鉛筆なの? シャーペンの方が楽じゃない?」
「どーせすぐ失くすから」
「失くすなよ」
純だ。
夏が引越の時に文房具を失くしたとか言うから、自分のシャー芯買うついでに案内をしている。
夏は異常なまでに物を失くすし、探すのも下手だから二年の一年間で消しゴムは14個、鉛筆は19本失くしたとか。
……小学の時は精々一年に十個以内だったのに。
「あれ~、忍に純くんと……誰かさんだ~」
「あ、桜!」
「俺は誰かさん呼ばわりかー……」
桜からしたら完全に誰かさんだろうが。
「桜も文房具買いに?」
「ううん~、お母さんにお使い頼まれちゃって。賞味期限切れ直前のものとか買いに来たんだ~」
賞味期限切れ直前って。
「あ、ところで~、その後ろの誰かさんだぁれ?」
「なっくんだよ。山口に住んでた時のお隣さん。で、何故か今もお隣さん」
「へぇ~、じゃあ学校で会えるのかな?」
会わなくていいと思う。
「……なっくん、水中だよね?」
「水中? あ、水ヶ丘中の略か。うん」
「分かった~、じゃあまたね~」
「うん、じゃね」
「……可愛い娘だな、純?」
何故そこで俺にふる。
「で? だから何だ」
「学校の友達だろ? 今の。何か親しそうだった」
「俺は一言も喋ってないんだが」
「最初に純って名前で呼んでたよなー」
だから何なんだ、ってのに。
「あれ、忍に純じゃん。何してんの?」
「あ、しーちゃん。見ての通り買物でーす」
「……そっちの純を問い詰めてるっぽいのは?」
「なっくん。別に問い詰めてる訳じゃないと思うよ、多分(きっと、恐らく)」
きっと、恐らくって聞こえてるんだけど。
「しーちゃんは? 何か買いに来たの?」
「いや、あたしは母さんに弁当持ってきただけ。今朝忘れて行ったから」
「そっか~、しーちゃんのおかーさんここで働いてたね」
「そゆこと、じゃな」
「ばいばーい」
……この調子だと清まで来そうだな。
ま、それはねぇか。
「純……今度は呼び捨てだったなー」
「さっきから何なんだ。意味分かんねぇ」
「友達か?」
「ん、まぁな」
忍の、の方が正しいけど。
「…………お前さー、男の友達居ねぇの?」
何でそうなる。
「居るっちゃ居るけど」
五月蝿いのが。
「よーっ! じゅしの!」
……出た。
「毎回毎回混ぜるな」
「何だー? 混ぜるな危険? 洗剤じゃねーんだからいーじゃん」
理由が訳分からん。
「およ、その後ろのは?」
「夏。前に住んでた所で隣だったんだけど……何故かまた隣に引越してきた奴」
偶然とは思えねぇんだけどな、正直。
「へーっ、オレは清っつーんだ、よろしくな、夏!」
「あ、よろしく。……純、お前友達居たんだな」
どういう意味だ。
「あ、ところでさ、篠知らね? アイツ弁当の箸忘れて行きやがってさー……一応篠の母ちゃんには届けたけど」
「篠? さっきここに居たよ?」
「えーっ、まさかのすれ違い!? ちぇっ、何かおごらせようと思ったのに」
汚ねぇ奴だ。
「それ位で篠は奢ったりしねぇと思うけど」
「二十五回目なんだよ! そんだけやったら流石に……」
「二十五回目!? そんなに忘れてったんだな……」
……お前はそれ以上に物を失くしてると思うけど?