52 引越し来ました
「……あれ、お隣さん引越しすんの?」
「違うよ~、引越して来たんだよ~」
……え?
忍です。
ベランダで日向ぼっこしてたらね、お隣に引越しトラックが来たんだよ。
「お隣住んでたじゃん。あの人等はどーすんの」
「だから~。お姉ちゃんがインフルしてる間に引越しちゃったんだよ~」
初耳ですが。
「終業式の日だよ~。ほら~、お姉ちゃんのお友達が来た日~」
「あの日!?」
気付かなかったのは回りが五月蝿かったからとか?
「でも~、どんな人が来たんだろうね~」
「うーん……おすそ分けとかくれるおばーちゃん」
「……それお姉ちゃんの来て欲しい人でしょ~?」
ばれたか。
あ~、煮物とかおすそ分けしてくれるおばーちゃん居たらな~。
「同い年のいい子な女の子居るかな~」
「光……友達欲しいのね」
も~、昼休み寝てばっかりだし、話しかけたりとかしないし。
話しかけられるときは「〇〇貸して?」がお決まりだし。
う~ん……まだこの状態か。
「はーちゃんみたいな子がいいな~」
はーちゃんって言うのはね、前山口に住んでた時のお隣さんで、本名海中春ちゃん。
光といっつも一緒に……探検しながら落とし穴等罠を仕掛け……。
「ねー光。はーちゃんといい子にどういう繋がりがあるか知りたいなー」
「え~、そんなの言わなくても分かるでしょ~」
分からないから聞いてるんだけどな~。
「話しやすいでしょ~、明るいでしょ~、言いたいことズバって言っちゃうでしょ~、悪い子にはお仕置きするでしょ~」
そのお仕置きがとてつもなく怖いんだけど。
「あ~、荷物入れ終わったみたい~」
トラックが消えてる。
ピーンポーン
「はいは~い~」
………………。
「光、今ピンポン押した人、こっから見えるけどさー」
「はーちゃん~!」
「やっぱりか!」
どーりで似てると思った! 3年くらいじゃ人ってそんなに変わらないね!
「ひーちゃんっ!?」
「あら~! あららららら~!!」
……おかーさん出てくるのおそ……。
「……何の声だ?」
「純兄っいつの間に!? どーでもいーけど海中家が引越してきたよ」
「…………マジで?」
マジです。
「よっ」
「出たぁ!」
いつの間に入ってきた!?
純兄の後ろで片手挙げてる奴!
「ひでぇ。幽霊扱いか?」
「そりゃーいつの間にか入っていつの間にか背後に立ってるんだもん」
「…………誰だ」
え。
「純兄ー、覚えて無くても何も困らないけど「おい」覚えといてあげようよー。な……な……な……あれ、何だっけ?」
はーちゃんの兄。
これくらいしか覚えてないんだけど。
「ひでぇ……。夏だよ、馬鹿」
あぁ!
「なっくんだ!」
「そ。純、意外とオメー記憶力悪い?」
「人の不幸を笑い、その笑いをと切らせた奴を片っ端から屍にしていくような奴に知り合いは居ない」
しっかり覚えてるんじゃんか。
「人の不幸は蜜の味ってな」
最悪だこの人。
「……変わってねぇ……」
多少は変わってることを期待してたんだ。
引越し直前まで笑われたからな~。
違う、大爆笑されたんだ。
「で、なっくん等はどーしてここに?」
「親父の気分」
『おい』
「と親父の会社の都合」
……良かった。マトモな理由があったか。
「忍~純~なっくん~」
『何?』
「なっくんとはーちゃん家が落着くまで海中家泊まることになったからね~」
……は?
『きゃーっやったね~ひーちゃん(はーちゃん~)!』
いや、下から聞こえてくるこの声はほっといて。
スペースあるの?