49 家庭内追いかけっこ
「だから安静にしてろってのに!」
「やだやだやだぁ、暇だもん!」
『うわ~ぁ』
光です~。
今ね~、純お兄ちゃんとお姉ちゃんが追いかけっこしてるんだよ~。
お姉ちゃんもう治ってるんじゃないのかな~?
でもまだ熱下がってないのか~。
37℃代って言ってたから~。
「ったく、これだからテメェはただの風邪でも回復に三日はかかんだ。アホ!」
「むっ、アホとはなんだ!」
「標準語だから馬鹿以上、だ!」
関西だったらアホより馬鹿の方がこたえるんだったよね~。
「にーちゃん、ねーちゃん、オレも参加してもいーかっ!?」
「お前はこれを何だと思ってんだ」
「へっ!? 追いかけっこじゃねーのか!?」
違ったの~!?
「…………追いかけっこと言えばそーか。うん、そーだね……うわっ!?」
純お兄ちゃんの足払い~。
「捕まえた。寝ろ。無理して」
「えーっ」
無理してって~……。
あ~。連行されちゃった~。担がれて~。
あんなのって普通お姫様だっこじゃないの~!?
「忍~、お薬~。吸う時間でしょ~?」
「ダメだぜ母さん! 麻薬は二十歳になってからだっ!!」
べしっ
「それは酒と煙草だ。麻薬違う。第一お袋が言ってんのはインフルの薬」
「……だからってそんな力いっぱいはたかなくてもいーと思うんだオレは」
「手加減したけど」
手加減してそれなんだね~。
「純兄ー、おっかけっこの続きしよっ!」
「テメェな……」
純お兄ちゃん~、疲れてるみたいだね~。
「寝てろっつってんだろ」
「ヤだ」
どさっ
大外狩り~。
またお姉ちゃん捕まっちゃった~。
「布団に突っ込んでもすぐ出ちゃうけどいーの?」
「睡眠薬でも買って来てやろうか?」
純お兄ちゃん~。
買ってきてもお姉ちゃんが飲まなかったら意味無いよ~。
リンゴの中にでも埋め込むつもりかな~?
「てい」
どすっ
「つっ」
お姉ちゃんの膝蹴りが純お兄ちゃんの鳩尾に命中~。
痛そ~。
「純兄、油断大敵だよ」
「追いかけっこか!? オレも混ーぜてっ」
剣くんだ~。
頭に鎌が食い込んでるのは気のせいだよね~。
「ひぃねぇ、気のせいじゃないよ」
…………気のせいにさせて~?
剣くんが人間だったらとっくに死んでるくらい出血してるんだから~。
ついでに左手凍ってるんだから~。
「……しーねぇ病気じゃないの」
「一応ねー」
「……クス「いいですいいですいいですって」……これはまとも」
これ『は』って~……。
「……ちゃんと動物実験してあるから」
「そっ! 斬にしては珍しすぎる事に成功したんだぜ!」
「へぇ~っ」
……あれ~……。
「天ちゃん~」
「ん?」
「動物実験の動物って~……」
「もちろん剣」
やっぱりね~……。
「……はい」
「ありがとーね」
あ~、クスリ飲んだお姉ちゃんの顔が『うぇっ』って言ってる~。
不味いんだね~。
「おかーさん、体温計貸してー」
「36.5℃だ。治った!?」
「舌が痺れたりとかは?」
……岳お兄ちゃん~。
そんな普段見せない……と言うか殆ど見たこと無いマジメな顔して聞かなくても~。
「よし! 純兄、もー一回!」
……まだやるの~?