45 まきまき大戦争!!
『たんじょーび、おめでとー!』
「……あれ? あ、そっか! ありがと!」
忍でーす。
今日が自分の誕生日だと言うことを綺麗さっぱり忘れてました。
春分の日って二十日だったり二十一日だったりするでしょ?
ややっこしいねー、全く。
……でも、晩ご飯が手巻き寿司なのに気付かなかったあたしってどーなんだろ。
家で手巻き寿司なのはあたしの誕生日の時と岳の誕生日の時だけなんだよー。
理由は簡単、あたしと岳が手巻き寿司大好きだから。
だって何入れてもいいんだもん、楽しいでしょ?
「わーっ、すぅっげー! 色々ある!」
「にんじん、きゅうり、レタス、……魚が三種類? 納豆……え、紙? それも沢山」
天、それは紙じゃない、海苔!
あたし達は山羊じゃないから!!
「……つぶつぶ」
イクラはそう言う物だから。
「いたーきまっす!」
「あ~、岳お兄ちゃんフライングだ~!」
「とか言いながらテメェの口元に米粒がついているのはどういう訳だ、光?」
「あはは~」
……あ゛っ、出遅れたっ! 突っ込んでる隙に!
「あ、父さん鮭取りすぎ! ずっこい!」
「弱肉強食! これぞ自然界の掟」
「……どっちかと言うとそれは早い者勝ち、だろ」
よし、この隙にマグロ(半額)……ん?
「いつの間にマグロが半分に!?」
『何!?』
そんなに息ピッタリに振り向かんでも、岳におとーさん。
もむもむもむもむ……
「光、犯人はお前か!!」
「やだな~、何処に証拠が~?」
『その皿の上の鉄火巻き(四コ)は何だ!?』
う~ん、ナイスハモり?
さっきの二人+あたし。
「……戦争」
「戦争だな」
「止めるな! 放せ! オレは行く!!」
『行くな』
うんうん、天に斬、そのまま剣を押さえておいてくれたまえ。
だって、ね? おとーさんはこの子達見えないんだから。
寿司が宙に浮いてたらどーなることか。
一番の理由はあたし達の食べる分が減ることなんだけどねっ!
「ほらほら~、落着いて~」
「母さん、皿の上のイクラ巻き(四本)は何だ!?」
「戦利品だよ~?」
『ね~』とか言いながら、微笑みながら光と顔を見合わせないで?
「まぁ、落着け!」
「なっ、落着いていられるか!!」
「五月蝿いから落着け。近所迷惑だ」
「……はーい」
純兄凄い。うん。
「よし、落着いた所で……じゃじゃん!」
おとーさんが出したもの。
空のトレイ。
「……なんだよ期待させといて!」
「期待してたんだ?」
「当たり前だ!」
「おっかしーなー……」
いや、おとーさん、裏っかわ見ても何も無いから。
「あ~、そこにあったマグロなら食べちゃったよ~?」
『な!?』
「だって~、要冷蔵なのに常温でほったらかしにしてたんだもの~」
……この二人、間違いなく家では最強だなー。
女は強い。
……あれ、あたしは!?
「忍ねぇ、ちょっと分ーけて?」
「巻く所からやってみる?」
「え、でも……「おとーさんはショックで意識三分の二程飛んでるから」やるっ!」
うん、いいお返事。
いいお返事だからテーブルの上にあるネタ全種類入れようとするなー!
「いっただっきまー「……もむ」なぁあああああ!!」
斬の一口くらい小さいんだからいいじゃん。
「じゃあ私も。あむ」
「みぎゃああぁぁああああ!!」
おぉ、天の一口は大きかった。
……多分剣を弄るのが目的かと。
「……あっ、マグロ……」
良かった、後一切れ残ってた……って一切れだけ!?
あたしまだ食べてなかったのにー……。
とられる前にとっておかないと。
シュッ
「……あ」
セーッフ、おとーさんにとられる所だった。
「……食べてなかったのに……。忍、おとーさんにそれよこしなさい」
「断固拒否!!」
渡してたまるか!
「子は親に尽くすものだ!」
「え、そなの? 今は別だ!」
「いつだろうと同じだ!」
なんだろ、えーっと……、親権乱用?
「ふーんだ」
「こら! 親にその態度は何だ!」
寿司のネタでそんなに変わるものなのかねー、性格って。
ま、いーや。はもっ
「あああああぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
おとーさん、撃沈(?)!
この戦争は一時間もの間続いたのでしたとさ。めでたしめでたし。
そんな、誕生日な晩ご飯でしたとさ!
……ケーキは?
ッという事で、忍の誕生日でした。
伏線全く入れてませんでした(精々三月と言うことくらい)。
忘れてたわけじゃないですよ! 覚えてなかっただけで。
書いてて思いました。誕生日殆ど関係ない。
けーき……ケーキ……あ゛。