408 いらないものはこまめに捨てましょう
「……あれ~? お姉ちゃん掃除してるの~?」
「うん。中学の整理しとかないと」
「今日は真面目な人格なんだね~」
どういう意味? あたしの中に色んな人格が巣食ってるとでも言うつもりか?
……否定はできないのかもしれない。
忍でーす。
部屋の……と言っても、部屋は光との二人部屋だから、正しくはあたしの家具の周りの整理をしています。
なんとびっくり、小学時代のテストが出てきました。理科、百点。よし。……なにがよし? なんであるの? ねぇ君? 迷子になったの? お母さんは? テストのお母さんって何? 機械? 先生?
まぁ、それはともかく、棚だの机だのから取っとく物といらない物を仕分けしています。このテストはいらない物。中学の教科書は副教科以外取っとこう。ノートは……いらないな。教科書で十分。
そんなこんなでどんどん分けます。とことん分けます。
……また小学時代の物が。『フリー学習』って書かれた紫のノート。
コレは確か、小六の時に担任だった先生が『中学生になったら宿題が無くなるから、自分で勉強する癖を付けときなさい』ってことで出した宿題だ。一時間、何でもいいから何か勉強しろっていう……。
少なくともあたしには、勉強する癖なんてつかなかったけど。
でも、懐かしいなー。何やってたっけ。
『十月二十日 堀川先生の観察』
…………………………なんかいきなり変なのやってるんだけど。フリーすぎるだろ。
『・怒りかたがおかしい ・こだわるところがおかしい ・なんかもう、色々おかしい』
おかしいって事しか書いてない……。他にも似たようなことをいっぱい。
『十月二十一日 進○ゼミやりました』
嘘吐けぇ! あたしの事だから絶対溜めてた! やって無かった! そして多分、この宿題をやるのを忘れてた。
『十月二十二日 『赤い靴』の替え歌 『青い目の人形』の替え歌』
なんでこの曲!? なんでこの歌!? 古すぎやしないか!? 先生ぜったい分かんなかったよ『青い目の人形』って曲。
あたしだって、お母さんに誘われて、老人ホームにボランティアで歌歌いに行くために知った曲だし。お父さんも知らなかったって言ってたし。
「あ~、やっちゃうよね~」
「……ん? 何を?」
「掃除の途中に見つけた物を読んじゃって~、結局終わらないって事~」
……あるよねー。よし、読むの終わり! これはいらない物!
えぇと、こっちのは……英語のワークか。パラパラっとめくってみたら、始めの数ページしかやってない。
あれ? おかしいな。あたしのは真っ白の筈だ!
……いや、やって無いわけじゃないんだよ? 何回でも繰り返しできるようにノートにやっただけだからね? 今年『は』!
で、これ、あたしのじゃないとすると誰の? 純兄だったら最後までやってそうだし……。あ、名前書いてあった。
『海中夏』
なっくんか! なんでなっくんのワークがあたしの部屋にあるの!?
「なっくーん! なっくん! 居るー?」
「姉ちゃん……なんで壁に向かって叫んでんだ」
岳と純兄の部屋。この隣はなっくんの部屋なんだよ? 頑張って叫べば聞こえると思う。そしたらベランダから行くよりも早い。
「居たら来てねー! ……よし」
「自分から行った方が早くね?」
「めんどくさい」
さー、続き続き。
「……何だこれ」
「猫耳だね~」
「本気で言うわ! なんであんの!?」
「そもそも家にそんなのあったの~?」
なんとなく気分で壁の方にぺいっ! 投げると言うよりも叩きつける感じで。
「あれって耳取ったらただのカチューシャだよね~? 貰っていい~?」
「どーぞどーぞ。カチューシャ欲しかったの?」
「うん~。みーちゃんがね~、こないだ可愛いカチューシャ買ってもらってたの~。でね~、何でもいいからカチューシャ付けてみたかったの~」
「ふーん……。可愛い柄の布でもまいといたら?」
「やってみる~!」
あるのかどうかはともかく。
さーて、大体分けられたな。
……要らないものを積み上げたら、机より高くなった。