407 岳くんを探せ!
「お、これ岳の?」
「あー? どれオレのって?」
「テーブルの上に乗ってる卒アル」
「あぁ、オレの」
岳だ!
卒業式は明後日の月曜だから、成績表だの卒アルだのは持って帰ってきてるんだ。母さんに見せてって言われたから出して、しまい忘れてた。
そしたら今度は、土曜日だからってゆっくり寝てた父さんがそれを見つけたらしい。……父さんの椅子のまん前に置いてたもんなー。そりゃ見つけるか。
「岳お兄ちゃんの卒アル~? 私も見る~!」
見なくていーのに。
「あ~! お兄ちゃん居た~!」
『ウォー〇ーを探せ』か! もしくは『ミッ〇』か!
「あ、姉ちゃんおはよ」
今起きたのか?
「んー、おはよー」
……髪がすごいことになってる。はねまくってる。オレ等皆くせっ毛だもんなー。言うほどきつくも無いけど、ストレートには程遠い。って位。
「ね~、お兄ちゃ~ん~。これ何してるの~?」
どれだよ。んー?
左上の文字は『授業風景』で、光が指してるのは黒板。授業内容教えろってか。
「これはー……何やってんだ」
「それを聞いてるのはこっちでしょ~」
いや、だってさ? 黒板にかかれてた文字は『新種のウイルス』だぜ? 保健かと思ったら、その下には消防署や警察なんかの地図記号。
な? 『何やってんだ』ってなるだろ!?
あ、新種のウイルスのそばで里山がピースしてる……いやだから、何の写真だよ。授業風景じゃねーじゃん。里山立ち歩いてんじゃんか。
「よし!」
「あ? なにが『よし』だよ、父さん?」
「銀行の地図記号もちゃんとある」
だったら何だよ!
「あれー、何それ。岳の卒アル?」
「そうだよ~。あんまりお兄ちゃん写ってないけど~」
そりゃ、カメラあっても近づくなんて事しねーもん。変な顔して写ってたら嫌じゃん。ほら、そこの体育大会の時の写真で、ゴール直前で目ぇ瞑って口半開きの翔みたいに。
「あ、岳居た。これ修学旅行の部屋?」
「うん」
修学旅行の部屋で取った奴かー。八人を四人四人で立つのと座るのに分けて、オレは真ん中に座ったんだ。枕投げでオレVS,七人でやってたせいで、踏まれそうになったんだっけ。
後ろの四人のすね、思いっきり殴っときゃ良かった。
「なんで皆口開けてんの?」
「写真屋のおっちゃんが『1+1は』とか言うから。全員『田んぼの田!』って答えたんだよ」
「全員で!? すごいなー」
え、父さん、そこ褒めるとこか?
「わ~、大きい集合写真だ~!」
ジャングルジムに登って、学年全体で撮った奴。
「お兄ちゃんは~……居た~!」
場所はジャングルジムの一番上の丁度真ん中。隣には修也と翔。……あれ、修也、オレより高くね?
「修也くんってお兄ちゃんより背が高かったっけ~」
「同じのはずなんだけど」
こないだ、奈那子さんに『背中合わせて立ってみて』って言われてやったときも同じだったし。コレ撮ったのは九月で、着衣水泳の時も同じ高さだったから、ぜぇったいオレより修也が高いなんてねーのに!
「岳は背中が曲がってるんでしょ」
「よく分からないな~」
でも、ありえるかも……。修也って『姿勢いい』って言われた事あったし。体はかったいけどな!
「翔でかいね」
「翔は前からでかかったし」
むかつく事に。
「五年生の時のもある~! これって林間学校~?」
キャンプファイヤー! あ、理絵と翔の間にオレ座ってる。この時着てた服は白のはずなのにオレンジだ。
「林間学校って楽しい~? ねえ~、お姉ちゃん~?」
「あ、そっか、光は来年か。……んっとねー、あたしん時はね」
「お姉ちゃんの時は~?」
「嵐だった」
「…………お兄ちゃんは~?」
嵐だったって……。そういや、作ったカレーがすぐ冷めたとか言ってたっけ。風すごいとか言ってたっけ
「そーだなー。肝試し楽しいぜ。どの化け物がどの先生か当てるのが」
「岳、ズレてるよそれ」
分かってるからいんだよ。
「すっごく分かるけど」
分かるのかよ!
「楽しみだな~。お泊り~」
そっちけ?