404 三年前はこうだった
「ひっかりー!」
「何~?」
「見ろよ、兄ちゃん達の卒業アルバム見つけた!」
「中学校の~? 卒業は明日でしょ~?」
「小学のだよ!」
岳だ!
部屋の、兄ちゃんの本棚、下のほうに、水色の卒アルをめっけたから光を呼んでみた。
「見よ見よ~! どんなの~? 私見たこと無いの~!」
「いや、覚えてねーだけだろ」
だって三年前、一生懸命に姉ちゃん探してたし。
最初にあったのはクラス……いや、ちがうな、学年写真だ。ジャングルジムの周りで、しゃがんだり立ったり登ったりして撮ってるある。
「わ~、皆岳お兄ちゃんと同い年みたい~」
「同い年だよ!」
「あれ~!? これってひょっとしてみーちゃんのお兄ちゃん~!? 若~い」
『幼い』じゃねーか!?
「お姉ちゃんと純お兄ちゃん何処だろ~」
んー? あ!
「姉ちゃん居たぜ! ほら、ジャングルジムの上のほう。これ!」
「ほんとだ~! あんまり変わんな~い~」
……確かに。髪の長さも同じだし。今の方がちょっと長いかなってくらいじゃん。
両隣に居る奴がでかいから谷が出来てる……。
「純お兄ちゃんは~……? あれ~、ひょっとしてコレ~?」
デケー奴の陰になってる……皆が見える写真使えよ!
「顔見えな~い~。幽霊みたい~」
細いしな。良く言えば華奢。
「あ、こっちに一人ずつ写真載ってるぜ」
「この人って~、ゆうちゃんじゃないかな~?」
あ、ほんとだ。……髪が短い! ベリーショートって訳じゃねーけど。
最近見たときのゆうちゃんのイメージがさらさらロングだったんだよ! だから違和感が。
「居た居た~! お姉ちゃんと岳お兄ちゃん~!」
え、オレ?
「兄ちゃんだろ」
「岳お兄ちゃんにしか見えないよ~?」
……………………うーん。
確かに、いつも鏡見たときの物と同じのが写ってるけど。髪の長さまで同じだ……。
「純お兄ちゃんが笑ってるよ~」
「姉ちゃんと笑い方同じじゃね?」
つまり無邪気。あの兄ちゃんが! 無邪気! 無邪気!?
「写真屋さん何言ったんだろうね~」
「『一たす一はぁー?』とか?」
「そんなこと言ってたらお姉ちゃんがなんて言おうか困ってる顔で写ってるよ~」
いや、何枚か撮るだろうからそれはねーだろー。
「いいや~、考えても解んな~い~」
他の所は林間学校に体育大会、修学旅行とか授業風景とか。
姉ちゃんも何枚が写ってる。一緒に写ってる人はまちまちだけど。修学旅行のとき、同じテーブルで飯食った人とか、同じ班の人とか。
入学式の写真にはもちろん入ってねーし。小五からだもんなー。
「ここから文字だ~。卒業文集~?」
「あ、将来の夢書いてあるぜ」
『女優になってハリウッドに行く』とか『プロ野球選手』とか書いてある。
姉ちゃんのはー……。あった!
『のんびりすごす』
……姉ちゃん……。他にねーのか。小学生の時の将来の夢がコレか!?
あ、となりにゆうちゃんのも。
『めざせ大金もちの玉のこし』
これよかマシか!
姉ちゃんの下に兄ちゃんのもあった。
『金の心配をしなくていい旅』
『旅』だけでよくね!?
「あ~、みーちゃんのお兄ちゃんのやつもあった~!」
どれだ?
『天文学者』
……『おぉ……』としか言えねー。