401 いーち、にーい
「おっ泊まーり、おっ泊まーリ! いぇー!」
「いえ~! ……みーちゃんも一緒が良かったね~」
忍です。
なっくんとはーちゃんが今日、ウチに泊まりまーす。
理由はね……秋ちゃん冬くんが用事で日付変わったくらいにしか帰ってこないの。
これだけだったらご飯一緒に食べる事はあっても泊まったりなんかしないよ? なっくん中学生だもの。間も無く高校生だもの。
ただね、秋ちゃん達が家を出た頃、なっくんは村田とかその他の男友達とかと一緒に……どこ行ってたのかまでは知らないけど、遊びに行ってたの。はーちゃんは光や美代と一緒に外に遊びに行ってたの。
そして、二人とも鍵を忘れてってたんだな。
秋ちゃんはベランダの窓から玄関の鍵まできっちり閉めて行っちゃったから帰れない、と。
いやー、良かったねぇ、家が隣で。明日学校だけど、その辺も気にする必要無いよ。
で、なっくんとはーちゃん、はーちゃんと一緒に寝たい光と、何か楽しそーとか言って岳も一緒の四人はあたしと光の部屋の向かい側にある和室で寝ています。
……いや、寝ては無いな絶対。何か話してること間違いなし。声聞こえるもん!
うーん、いいなぁ、楽しそう。毛布羽織ってあたしも行こっと。
「何話してんのー」
「なんだぁ? 結局来んのか! 最初っから来りゃーいいのに」
ニヤニヤやめてくんない?
「お皿が一まーい、お皿が二まーい」
ん? なっくん、皿屋敷話してたの? 冬に怪談? 寒さの上に怖い話してどーすんの。
「お皿が三まーい、四枚、五枚、六枚七枚八枚」
だんだんめんどくさくなって適当になってきたよ。しかもどんどん速くなるし。
「九枚十枚、あ、足りた!」
足りちゃダメでしょ!
なっくん、今勢いで『十枚』って言っちゃったんだ!
「やり直し。お皿が一まーい、二まーい、三枚、四枚五枚六枚七枚八枚九枚十枚……ぁっ。ゼロ枚足りなーい」
やっぱり足りてるじゃん!
さっき『あっ』って言ったよね!? やっぱり勢いで言っちゃってるんだよね!?
「おい、テメェ等。今日学校って事忘れんなよ?」
「え? もう今日になってんのか?」
なっくんごめんね、そんなに見回してもこの部屋に時計は無いんだよ。
「三十分くらい前に」
「あぁ、何だ、まだ十二時台か」
「『まだ』じゃねぇよ。小学生は寝る。ついでに忍もここで座ったまま寝ちまう前に自分の部屋行け」
動くのめんどくさい。このまま寝たい。光ー、はーちゃーん、どっちか布団分けてー。
「ダルマになってねぇで動け」
……毛布、赤いもんね。あたしはそれに体育座りの格好ですっぽり包まってるもんね。ダルマにも見えるか。
「俺、今テンションがちょっと上がってるから、笑うか喋るかしねぇと寝れそうにない」
「オレもまだ眠くねー」
「岳は目を瞑って羊数えよう。なっくんはー……知らない」
あ、岳、本当にやるの? 羊数えててそっちに夢中になる、何て事無い?
「よし、夏。パズルやるか?」
「遠慮するわ」
「普通の数独だぜ? 中級だから簡単だし」
「羊が一ぴーき」
「酷くね?」
あたしに言わないでよ。
「羊がニひーき、羊が三匹、羊が四匹、羊が五匹……中略」
略しちゃ意味ないでしょうが!
「羊が五十七匹」
中途半端なとこに飛ぶなぁ……。
「羊が五十八匹……逃げ出したので誰か捕まえてください」
なんでそうなるの!?