393 ひな祭りだけどなぞなぞをしよう
たたとったった、たたとったった、たたとったららとたららら、たたとったった、たたとったったたららっ、らっ、ら~
と、言う音楽が教室のスピーカーから流れてる……筈なんだけどなぁ? いつものこの時間なら。
なのに今日はひな祭りによく聞くあの音楽が流れてる。替え歌も有名なあの名曲が。
岳だ。
今日はひな祭り。光がそれを覚えていた場合、調子に乗る日。去年は忘れてたっぽいけど。
で、今は給食。メインはちらし寿司。音楽を鳴らしてるのは放送委員。
『こんにちは、お昼の放送です! 今日は気分を変えて、ひな祭りのあの歌を流してみました!』
皆スピーカーの方見上げたよ。里山はなぜか拍手してた。で、すまし汁こぼして怒られた。今雑巾で拭いてる。
『どうしてひな祭り用の挨拶ないんだろう、と思ったのはここだけの話』
どーでもよくね? ひな祭りだけじゃなくても、子供の日とか春分秋分の日にもねーじゃん。
「岳ー」
「あん?」
「無表情で黙々と食べ続けられると何か怖い。何かあった?」
「…………翔、そんなにオレが無表情してんの珍しいか?」
あれ、考え込み始めた。
「そうでもないかも」
だろー。
誰とも話してないのにニコニコしてても怖かろーが。食えねーし。
『それでは、なぞなぞのコーナーです!』
なぞなぞかー。……こーゆー時しかやんねーな。
『第一問! 初めは四本足、次に二本足、最後に三本足になる生き物なぁに』
『もう一度言います』でリピート。
……むっちゃ簡単じゃん。
「岳、分かる?」
「え、翔分かんねーの!?」
「えぇ!? 普通分かるもんなの?」
「普通分かるって」
……っつーか、元から答えを知っているっつーか。
「何?」
『答えは人間です!』
やっぱし。
「……何で人間なの?」
「えぇー。初め赤ちゃんだからハイハイだろ? 次に普通に歩くようになるから二本足じゃん。最後に杖突くから三本足!」
「杖は足じゃないじゃん?」
こまっけーな!
「なぞなぞだからいいんだよ!」
「えぇー」
なんで『えぇー』だよ。なぞなぞはこーゆーモンだろ!
『第二問!』
………………。
あれ? 第二問は?
「事故ったね」
『事故ったな』
放送事故だ。五秒以上流れてねー。
「たまには息抜きも大切」
せんせ、それ絶対違う! うんうん、って頷きながら湯呑みのお茶みたいにすまし汁すすってるけど違う!
「お茶とオレンジジュースが対決したよ。どっちが勝ったかな?」
あ、戻った。『失礼しました』くらい言えよー。
で、何て? お茶とオレンジジュースが対決?
「オレンジジュース!」
うわ、翔ってば自信ありげじゃん。
「が、飲みたい!」
半分そうかな、とは思ったわ! 半分でも期待してみたオレが馬鹿だった!
「オレはオレンジジュースよりもリンゴジュース希望」
「岳くん、何張り合ってんの? ……あたしはグレープジュース希望!」
「奈那子も乗るのかよ!」
さー、修也、修也は何ジュースだ!
「……バナナジュース」
あ、言うんだ?
「バナナジュースか、やっぱオレもリンゴよりそっちがいい!」
『お前等何言ってんの』
周りから冷やかな突っ込みを一ついただきましたー。
「引き分けじゃないかな」
「へぇ? 何でだ、修也?」
「引き分けってデュースだろ?」
この放送、一年だって聞いてんだぞー。そんなの出さねーだろ。
『答えは『かったかな(片仮名)』でオレンジジュースです!』
「いやったぁ!」
翔、喜びすぎ。冷ややかな視線を大量にいただいてんぞ。
『今日の放送は、五年二組でした!』
おぉう、急に終わったな。
……で、終わるときもひな祭りの有名な歌なんだな。