391 保健室のお客さん方
「失礼しまーす」
「瑞花ちゃんもう大丈夫ー?」
失礼します言ったのに反応してもらえませんでした。
忍です。
保健室に来ました。保健の先生はベットに膝立ちになった瑞花ちゃんに何か話しかけているところでした。
「加奈子! 先生、その間違いはないでしょー」
えぇー。加奈子を瑞花って間違えたの? この先生、若いのにボケてるな。
「あぁ! ごめん、ごめん。この間違いは無かったね」
「どーやったら加奈子を瑞花と間違えるんですかー」
「あ、高山さん。どうしたの?」
あたしへの質問の前に、あたしからの質問に答えてくださーい。別にいいけどさ。
「お腹痛い」
座ってたら急に寒くなって痛くなってー、でもちょっとしたら引いて、また寒くなって痛くなって、の繰返し。
「はいはい…………湯たんぽでいいかな?」
「はい」
「あぁ後、熱も測って」
ほいな。
保健室の椅子に体育座り。スカートの下には体育ズボンをはいてますので気にする必要はありません。
「加奈子ちゃん、これ篠田先生に渡しておいてね」
篠田先生は女子体育の先生ー。体育大会の時の先生は産休なんで。
「え? 授業終わった後でも渡しに行かなきゃ行けないの?」
「まぁ、一応ね……休んだわけだし」
「はーい」
先生が加奈子に渡したのは小っちゃい紙。体温だの状態だの授業を休ませるか様子見といてって言うかもう帰らせるか……なんて事を書いた紙ね。その授業の先生に渡さないといけない。
「あ、先生、鳴った」
「何が?」
「体温計!」
聞こえなかった? 『ぴぴぴぴっ』って。
「あぁ!」
本当にボケてるんじゃ。この先生。
「六度七分か。熱は無いね」
ありませんよぉー。
「はいはい、授業出れる?」
「無理! 体育だから、次」
桜に『篠田先生にお腹痛いから休むって言っといて』って言っといた。
「あぁ、そうか。じゃあこれ、士農田先生に渡しておいて。職員室か体育館に居るから」
どっちに行くべきだ!?
職員室は保健室を出て左に行った方。体育館はその真逆……うーん。
あれ、ドアにはまったすりガラスから白い人影が。頭はスポーツ狩りで、多分着てる白い服はジャージ。
「篠田先生、今通り過ぎて言ったよ」
「あーっ! せんせー! 篠田先生!」
待って待って。
「今日体育休みますー」
「あぁ、はい」
……手に持ってるの、テストだよね。あたしのテスト、いつ返って来るのかな。
「ウチのも! 篠田先生! 篠田先生、待って!」
加奈子もか。一緒に持ってってあげりゃよかった。
「はい、湯たんぽ」
「ありがとーございます」
はぁー、あったかー。ほこほこー。固いー。
「横になる?」
「んーん、蹲ってるほーがいい」
ついでに言うと、制服で寝っ転がるのはスカートが気持ち悪い。
「先生。腰痛い」
あら、飛山さん。
「腰痛? シップ貼っとこうか」
「うん……」
あれ、別な一団が。一団!?
三年男子数名。こいつ等絶対遊びに来た。だって元気だもん。
身長と体重量ってるもん。
「先生! 先生これ見て! 160センチ行った?」
「うん? えぇー……いや、惜しいな。159.9センチ」
本とに惜しい。
「もういいじゃん。160で。よっしゃぁ、今日記念日! 160センチ記念日!」
どんな記念日だよ。
「ほらほら! 病人が居るんだから、行った行った!」
一団と一緒に飛山さんも出て行った。
加奈子はいつの間にか居なくなってた。
「大宮先生」
あ、保健室の先生の名前って大宮なんだ。……なんで知らなかったんだ、あたし。
そんなこと考えてる間に、何か封筒に顔突っ込んでひゅーこひゅーこやってる女の子が。え?
キャスター付きの椅子に座らされて、保健室の仕切りの向こう側へ。
聞き耳立ててて分かった。過呼吸だって。……過呼吸って何? どんなの? なったこと無い。
「あれ? 何でテメェがここに居るんだ?」
「何で以下同文」
純兄がやってきました。
「腹痛? 何食ったよ」
「キャットフード」
「…………………………えー」
「本当には食べてないよう。冗談」
「じゃあ真顔で言うなよ」
やーい、引っかかった引っかかった。
「やぁ、高山くん」
「次体育なんで」
「はいはい」
え? それだけ?
「純兄、何で体育って言っただけであーゆー答えが帰って来るの?」
「忍、貸しや口実は常に作っとくもんだぜ」
誰がそんな事を聞いたよ。