39 ちょっとおせーて?
「純兄ー」
「あ?」
「英語教えて」
「……………………は!?」
間違いない、明日は雪だ。
いや、まさかの巨大台風かもしんねーな。非常食あったっけか?
岳だ!
今さっきねーちゃんがオレ等の部屋に入ってきて、最初に戻る。
「ちょっっと忍。もうちょっとこっち来い」
「えー? なんで?」
「いいから来い」
「んー。分かった」
……大分前に見たんだけど。
こーゆー時相手がにーちゃん以外の男だったら『なんで』を連発するんだよな、ねーちゃん。
女でも全く知らねー奴だったらそうすんだけど。
オレが言っても『なんで』連発ってのはちょっと悲しいな……。これを見るとさ。
「……熱……ねぇな……昨日の頭痛まだ続いてんのか?」
「続いてたら勉強しようなんてしないから」
確かに。
「…………という事は精神科か?」
「酷いな! 何でそうなるの!?」
だってねーちゃんが勉強しようとしてるから。
余にも珍しすぎて。
「何でって……勉強マトモにやろうとしないテメェがやろうとしてんだ。驚かずに居られるか」
「酷い」
「で、何でまた……」
「え、何となく」
いっつもねーちゃんが何かする時は何となくだよな……。
「…………病院行って精密検「いらないから!」んで?何で英語なんだ」
確かに。算数……じゃなくて数学って難しいんだよな?
小学の先生曰く。
「ふぅ、やっと病院から離れてくれた……。何で英語? 何となく」
また何となくかよ……。
「では無く。珍しく」
自分で珍しくって言ってるし。
「英語は学校では欠片もやる気無いから」
え、そんな理由かよ!
「分かった。それは分かる。だから英語はテメェ9割9分9厘ほど聞き流してんだろ?」
にーちゃんそれで納得するのか!?
しかも9割9分9厘って殆ど全部じゃねーの。
「純兄惜しい。10割」
全部かよ! んな訂正いらねー!
「あ、そ。まぁ、アレじゃな」
「うん。アレだから」
「アレって何だよ!」
あ、声に出てた。
『英語担当の教師』
そんなに綺麗にハモらなくても。
ってか先生アレ呼ばわりか……ドンマイ知らない先生。
「アレが担当じゃな……俺も7割がた聞いてねぇ。家で出来るし」
進〇ゼミなー。
ねーちゃんもオレも溜めちまってるけど。
……あれ?
「家じゃ発音とかは分かんねーんじゃねーの? にーちゃんパソコン使うのは調べ物くれーだし」
「発音? 親父。あの教師は発音悪ぃから。……たまに来る外国人教師のなら聞くけど」
あー、マリア先生か。
父さんは……あ、そうか、昔アメリカ行って勉強したとかでぺらぺらだったな。
っつーか英語の教師って発音悪くてもなれるんだな……。
「はい、とゆー訳でおせーて?」
「別に教えるのはいいけど……何処を」
こないだねーちゃんのテスト見してもらったけど間違いの殆どがスペル間違いとかaが抜けたりとかだったな……。それで10点も落としてた。もったいねー。
「……発音?」
「何で疑問形なんだ」
何でもよかったとか?
「これ、ちょっとわかんなくてさ。勘で書く時発音って大切なんだよー」
「勘で書くなよ……単語くらい覚えろ」
「どちらにしても発音は大切でしょ」
「親父は?」
「まだ帰って来てない」
……にーちゃん、父さんにやらせようとしたよな、今。
「分ぁったよ……」
「とゆー訳で、ここ、よろしく」
「ここって……agreedか?」
……あぐりーど?はい、わからん。
「あ、それで良かったんだ。こっちは?」
「advertise」
うん、さっっっっっぱり分からん。
「advertise……advertise……advertise……よし、覚えた! 多分」
多分って付けるなよそこに。
それにしても……、
英語ってややっこしそうだなぁ。