387 黒い物体Xシリーズ
「こーんにーちはー」
…………声はかけたけど、誰も出てこなかったと言うこのむなしさ。
忍でーす。
純兄はゆうちゃんとデート(ちょっと引いた)、光ははーちゃん&みーちゃんと一緒に公園。
で、あたしは岳と一緒に近所の駄菓子屋『ミタチ』に来ています。
修学旅行や遠足なんかの時は必ずお世話になる駄菓子屋です。
「あったあった。エク飴パック」
黒い物体X飴ね……美味しいけど、自分が何食べてるのか分からない不安。人によっちゃ凄く不味く感じるらしいし。
「岳、こっちにドロップもあるけど?」
「オレドロップは好かねぇの。蓋固ぇじゃん」
なんちゅー理由だ。
「あ、いらっしゃい」
おー、飴ちゃん姉ちゃん。本名何だっけ? 飴子ちゃん? これは無いか。
「飴ちゃん姉ちゃん、これくれ」
「黒い物体X飴ね。よく食べられるねぇー」
「勧めたの誰だよ」
飴ちゃん姉ちゃんが勧めたんだ。
「九十八円ね。はい、毎度ありがとう」
パック結構入ってるのに、九十八円なの? 怪しすぎて売れないせい?
「そうそう! こんなの入ったのよ! きっと気に入ると思うんだけど。どう?」
ん? ガム?
「黒い物体Xガムよ」
「ガムもあんのか!?」
食いついたよ、岳……。変な味覚にだけはならないでよ?
「サービス。一粒ずつあげる」
「とか言って、結局はまた実験台なんだろ?」
「ピンポーン! ささ」
『実験台なんだろ』って聞かれて元気に『ピンポーン!』とか言わないでくれない!?
「まぁいいけどさー。タダだし」
岳、ひょっとしてエク飴もこんな感じで勧められたの?
「忍ちゃん」
「貰うよ。ありがと」
包み紙とっても真っ黒だよ。エク飴と全く同じ。
勇気を出して、食べてみよー。
「………………どう?」
「旨ぇよ、これも」
「うん、美味しい」
エク飴と特に変わったところは無し。
……ただ、本当にこれ何の味なんだろうってのは気になるけど。エク飴、エクガムでしか味わえない味。
「私も食べてみようかな……」
「頑張れ」
あぁ、飴ちゃん姉ちゃんは不味く感じる派なんだ。
口に入れた。一回噛んで…………。
「うぇっ。まぁっずい! よく食べられるね!?」
ポケットからティッシュ出して、それにガムを包んでポイ。あー、勿体なぁい。
「旨ぇのにー。勿体ねぇなー」
「私の胃の中のほうが大事だよ」
吐きそうになったのね……。
「そうそう、黒い物体Xシリーズ、もう一つ出てるの。ほら、黒い物体Xチップス」
チップス!?
飴、ガム、と着てチップスなの!?
「できるモンなんだ……」
「あれの試食もしてみる?」
『する!』
あれこれ試食させてくれるけど、いいのかなー?
「はい、どうぞ」
うん、確かに黒いけどさぁ。本当になんなの黒い物体Xって。
「………………どう?」
「旨ぇよ、これも」
「うん、美味しい」
食感以外、エク飴エクガムと変わったところは無し。
ところで、何でこれテカってんの。
「私も食べてみようかな……」
チャレンジャーだなあんた。さっき吐きそうって言ったよね!? 間接的に!
「が、頑張れ?」
岳! 煽っちゃダメでしょうに!
「頑張る!」
チップを口に放り込んで、パリって音と共に噛み砕く。
「あ、飴ちゃん姉ちゃん!? 顔色悪ぃぞ!?」
「大丈夫!?」
あ、口を押さえて店から繋がってる家のほうに駆け出して行っちゃった……。
「姉ちゃん、あの……あれって」
「岳、言わないでおいてあげよう」
「……そうだな」
黙ったまま、ちゃっかり試食のエクップスは綺麗に平らげるあたし達でしたとさ。