386 オカルト部……と言っていいんだよ!
「えぇーっと、何? 頑張れって言っとけばいいかな?」
「俺等吹奏楽部見て来るな。頑張れ岳」
「おれは野球部見てくるー」
「テメー等友達見捨てんのかぁっ!」
岳だっ!
修也に奈那子さん、翔にまで見捨てられた!
部活動見学、今は自由に見て回る時間。オレ達が今居るのは、校舎の一階から二階へ上がる階段の真中にある踊り場。そこで変なのに絡まれた!
超音波みてーな声の小っちゃい女子。
兄ちゃんより背ぇ高い男子。
ポニーテールの可愛い女子。
でっけーファイル抱えた男子。
スポーツ刈りの騒がしそうな男子。
の、五人。どっかで聞いた事ある声なんだけど……誰だろ?
「岳くんだよね! ちょっと来てーっ!」
「嫌です!」
「そう言わずにーっ!」
『頑張れ岳』
テメー等本当に行くなぁ! 頼むから一人にしないでくれ! こいつ等怖い! 後五月蠅い!
「でも、本当、純吉先輩にそっくりですね。マコちゃんの情報に頼良なくても見つけられちゃいました」
じゅんきちせんぱい!?
「しののんにも似てないか? ほんの少しだが」
しののん!?
「純吉センパイとしののん先輩もちと似てっすからねー。この遺伝子、俺も欲しかったっすよ」
「そんな話をしに来たんじゃないでしょう。早く部室に戻りましょう。逃げられないうちに」
おいファイル野郎! 最後になんつった!?
「そうだね! おいでおいで!」
叫ぶな超音波!
だぁー、腕引っ掴まれたまま抵抗できない……だって相手一応先輩だぜ? 流石に殴るの蹴るの捻るのするのはちょっと。
で、あっさり連行された先は三年五組。……あれ? 四クラスって姉ちゃん言ってたのに。
「よーこそ! オカルト部へ!」
あぁ! 思い出した!
こいつ等、姉ちゃんが『雑草みたいな人等』って言ってた奴等だ。
確かこのキンキン声が針先……先輩。長身の落ち着いてるのが古賀先輩。ポニーテールがえっちゃん先輩。……多分。
「開けるよー」
……うん、なんで扉開ける前に『よーこそ』言ったのかちょっと不思議だったんだ。
「おかえりー、捕まえた?」
あれ。
「岳、そいつ等に遠慮はいらねぇんだよ。嫌なら逃げりゃよかったんだ」
れれ。
「ふふ、ご愁傷様?」
何でここに姉ちゃんと兄ちゃんとゆうちゃんが?
「おっまたせー!」
「あー、ホントにお待たせされたよ。帰っていいですかー」
あれ? 帰ったんじゃなかったのか? 昼飯は?
「兄ちゃん達、何で居んだ?」
「呼んだんです……」
「呼んだだけでよく兄ちゃん達が来たな!?」
「おーい、どーゆー意味?」
そのままの意味だよ。めんどくさがり屋。
「チョコレート二箱買ってくれるって言うから来たんだよ。あたしは」
………………納得。
「アイス奢ってくれるんだとよ」
……兄ちゃん、冷たいモノ好きよな。冬なのにアイス?
「私は純くんに付いて来ただけよ。でも、コンビニのパフェ奢ってもらうわよ」
ゆうちゃん、ひょっとして奢り目当てじゃねーのか。
まぁ、オレに言えることは一つだ。絶対この三人、選択肢の中で一番高いの要求するぜ。
「えっとー、あれ? 部活見学に来た子にって、何を言えばいいのかな?」
おい。
「……活動内容、とかではないですか?」
「おー、なるほど、マコちゃんナイス!」
「おいテメェ等。そのやり取り四月にも聞いたぞ」
そーなんだー。
…………針先先輩って、アホなんだな、きっと。
「えっとね……普段はまぁ、殆ど何もしてないに等しいんだけど」
「先輩! イメージ悪くしてどうするんですか!」
「そのやり取り四月にも聞いたってば」
これもか。
「幽霊を引き寄せる術式を書いたり、その協力の依頼をしたりもしてるよ!」
その協力の依頼って言うのは兄ちゃん姉ちゃんにしてるんだな。よっく分かった。
「幽霊召喚、やって見せるね!」
「四月にやって失敗したヤツな」
「違うもん! 今度は進化してるもん! 今度は凄いから、期待しててね岳くん!」
今度はって言われても、オレ四月には居なかったし。でもまぁ、見るだけはしてよう。
紙を用意して(裏紙でもいいらしく、下にした面には英語がびっちり並んでた)、格子状の模様を描く。マス目は九×九。
で、その中に古賀先輩が数字を入れていく。
「魔方陣ってのは分かるけど、コレ!? 縦横斜めの魔方陣!?」
「まぁ待って、驚くのは分かるよ。でもとりあえず見てて!」
…………むーん、こんなんで召喚なんかできんのか?
中央の『41』の上にロウソクを立てて、ちょっと待たんかい。
「危なくないですか!? っつーか学校にこんなの持ってきていいんですか!?」
「あー、それ、四月にしののんに言われた!」
やっぱ?
「でも大丈夫! 持ってきたわけじゃないから!」
なら何処から。
「……理科準備室から頂戴した」
駄目だろ!
っつーか理科準備室にあんの? ロウソクが?
「岳くん、大丈夫よ。私たちは何も見ていないの。火事が起こったら少し遠い方の階段を使いましょ。そうすればこの人たちと一緒に居た事はバレないわ。口裏合わせしておく?」
しとく。
「さぁって、集まって来たかな? 幽霊たち?」
集まるどころか、通りすがりのお爺さんが会釈してっただけ。
「ねぇ、来た?」
「通りすがりのお爺さんとペットの犬だけだよ」
「……ガーン」
可哀想とすら思えないのはなんでだろーな。