385 部活動見学に行こう
「おー、中学校だぁ」
「そりゃ、中学校だもの」
「でっけぇ」
「中学校だもの」
「わ、テニスコートある」
「中学校だもの」
「翔、他に言えることねーのか?」
「中学校だもの」
最早答えにすらなってねーよ。
岳だ!
翔の言う事聞きゃ分かるよな。中学校だ。
部活動見学って事で来たんだけど、兄ちゃん姉ちゃんはとっくに帰った後。テストで三時間しかねーっていいなぁ。三時間! 夏休み冬休み春休み直前直後しかねー筈の三時間! 午前で終わり! 家で飯!
いや、まぁ、それはともかくだ。
体育館に入るだろ。
何かずらっと椅子や楽器が並んでんだけど。椅子には楽器を持った女子達。たまにぽつんと男子。
「吹奏楽部!」
あぁ、あれが。多っ!? 女子率高っ! この学校が極端なだけなのか、こういうモンなのか。
指揮台に禿げかかったおじさんが立って、手を振って、楽器くわえた皆がぱーっと音を出す。
………………何やってんの?
それだけやって、おじさんは指揮台から降りてどっかへ。
うーん?
「ようこそ、水ヶ丘小学校、第二水ヶ丘小学校、第三水ヶ丘小学校六年生の皆さん!」
お、誰か話し始めた。生徒会の人か?
「生徒会長の有塚です」
「副会長の、伊東です」
「今日は水ヶ丘中学校の部活動を知ってもらおうと言う事で――」
長いので、飛ばす! ……正直に言うと、あんまり聞いてなかった。ごめん、生徒会の先輩。
「初めに、吹奏楽部です」
……あれ? すぐに何か演奏するんだと思ったのに、何でマイク吹奏楽部の椅子の中から出てきた人に渡してるんだ?
「こんにちは! 吹奏楽部です!」
おー、明るい。
人数とか、去年の活躍とか話してくれた後、曲紹介。日本で流行った曲をメドレーにしたのを演奏してくれるらしい。分かる曲あったらいいなぁ。
始まった。分かんなかった。
「あ、これ知ってる」
翔には分かるのにオレには分からなかった。
曲調が変わったら、どっかで聞いた事のあるような曲だって分かってなんかちょっと嬉しかった。
「ありがとうございました!」
「アーンコール、アーンコール」
翔、あのな……。やってくれる訳ねーじゃん。
『アーンコール、アーンコール!』
周りに伝染したっ!?
『アーンコール! アーンコール!』
もう皆やってるし。オレも乗っかったし。
「有難うございます。それでは、先輩から後輩へ代々引継がれているアンコール曲を演奏したいと思います!」
あんのかよ!
ノリが良くて、すぐ手拍子でいっぱいになる曲を演奏してくれた。振り付けつきで。すげー。楽器吹きながら動いてら。チューバの人大変そうだな。でもオレは奥のほうでやってるドラムセットが一番気になる。かっけー。
で、それが終わったら
『アーンコール! アーンコール』
「もうありません」
苦笑しながら言ってくれた。
他にも野球部やらサッカー部、男女バスケ部に男女テニス部、男女バレーボール部……全部で何個だ? まぁ、感覚的にはいっぱい。部活紹介をしてくれた。
野球部サッカー部は『女子マネージャーも大歓迎』っつってた。ちなみに今は居ないそうだ。
…………オレが『だろうなぁ』って思ったこと誰にも言わないでくれよ?






