384 受験後なもんですから
「……………………あ」
「い」
「う」
「え」
「お」
「か」
「まだやんの!? き」
「てめぇも続けてんじゃねぇか」
あ、ちょっと、そっちから始めといて勝手に終わらせないでよ、純兄。
忍です。
学校について、例によって例のごとく誰も居ない教室について、鞄を机に置いて、ふと後ろ黒板の時間割を見ました。
三時間しかない。
しかも『内容』の欄には『テスト』の三文字。
「マジでか」
「何が?」
「あれが」
純兄も後ろ黒板を見て、
「で?」
「知らなかった」
「そうか。大変だな」
「そーお?」
少なくとも二年まではテスト勉強してなかったけど。
「音楽があるだろ?」
「だから?」
「三年間分の曲、作詞者名と作曲者名も全部出るってさ」
「よっしゃ、音楽捨てた!」
『簡単に捨てんなよ』って言われた。
いやでも、歌詞なら多分覚えてる。カンツォーネだのシャンソンだのもきっと覚えていたらいいなぁ。
「じゅーんくん、しーのぶ」
あ、ゆうちゃん。
「おはよー」
「おはよ」
………………じぃーっ。
「はいはい、おはよう」
「ふふ、おはよ」
目は口ほどにものを言う、ってか。
「ゆうちゃん、テスト勉強ってしてた?」
「え。今日テストなの?」
きょとん。
「お仲間ーっ!」
抱き合い、はしないけども。
「どうしよう。今日なんのテストなの?」
えーっと、後ろ黒板によると……。
「音楽、社会、国語」
やっばい、社会あるじゃん。
「純くん、社会のカンニングの仕方を教えて!」
完全にあきらめモードだよ、ゆうちゃん。不正行為に走ってるよ。
「霊体化して……」
純兄しかできないし。
「馬鹿っ、私まだ生きてるの!」
「純兄だって生きてるじゃん」
「死んでるから実体化してるだけなんでしょ?」
「え? 純兄いつ死んだの?」
「十の時。それはともかく」
すんなよ。
「不正行為する前にちょっとでもノート読み返した方がいいんじゃねぇのか」
「そうか!」「そうね!」
「………………忍が変なとこ単純でよかった」
何だってー? よく聞こえなかったなー?
……………………。
「ねぇ純兄」「ねぇ純くん」
『範囲は?』
息ぴったりだねー、あたし達。
「はぁ? 三年の学年末テストだぜ? 全部に決まってんだろ」
決まってることは無いに決まってるって皐月姉の迷言を忘れたかー。どちらにせよ、
『社会、捨てた!』
「テメェ等な……」
あとは国語か。……漢字見とくかなー。あーでも、そんなことするくらいなら音楽の事少しでも詰め込んどいた方がいいかも。
「純くんは勉強したの?」
「したけど?」
「え? いつの間に?」
「帰ってからパズルした」
それ全然関係ないことやってるじゃん。
「やってみるか?」
「やる!」
「……あたしはいいや」
あのうっかり壊したゲームで十分。
と言うか純兄、持ち歩いてんの?
「中学の学力で十分解ける。でも意外と難しい」
へぇ?
「少なくとも、親父は解けなかった」
へぇ!
なんだかんだでおとーさん頭いいのに。
「やってみるわ」
頑張れー。あたしは音楽を。
「持って帰ってもいいからな、それ」
「どれだけ私を見くびってんのよ」
「これ位」
おーい、なんであたしの頭の上に手ぇ乗せてんの?
「忍と同じくらいってことね」
分かるんだ。
……いや、あたしと同じくらいってどゆ事? 結局どれくらい?