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ただいま暴走中!  作者: 呪理阿
2012、如月を暴走
382/410

382 落ちたか受かったか

「ねぇ! 頼むから待っててよ!」

「お願い、純くん! 私達の気持ちにもなって!」

「まず、寒い廊下で待たされる俺の気持ちになれ」

 ……大変だな、高山兄も。

 岬だ。

 特色選抜と適性検査、推薦入学の合格発表が今日。俺はどれも受けてないから関係ない。

 それは高山兄も同じはずなんだが。高山妹と風見夕菜が鞄と腕を引っ張って残れコール。

「両手に花だなぁ、高山兄?」

「馬鹿言え。コレは両手に花じゃなくて両手に五十キロ台の重しだ」

『五十キロもないもん!』

 ……だろーな。風見は背ぇ高めとは言え、ほっそいし。高山妹なんかは小っちゃいし。

「分かった、分かってる。じゃあとっとと視聴覚室行ってきな」

 三つの試験のどれかを受けた奴は放課後視聴覚室へ。って、言われてたような気がするが、生憎その時俺は隣の席の小浜と話してた。

『待っててよ!?』

「やかぁしい。早くしろよ?」

 アイツ等の意志は関係ないだろ。

「村田は誰待ちだ?」

「俺はこれから帰るんだよ」

「ん、暇なんだ。だからアイツ等来るまで待ってて」

 断ったら怒るか? 断ったら何かされるか、俺。小学ん時いじめて、フルボッコにされて、さわらぬ神に祟りなしって感じで敬遠してたのに……。

「外で誰か待たせてる奴、帰らせなさい」

 川岸先生が喋ってる時って必ずシーンとなるのは何故だろう。

「帰れってさ」

「帰る大義名分が出来た。帰ろう」

 お前ホント酷い奴だな。

「純兄、下で待ってて」

「昇降口の前ね」

「……ちぇ」

 残念だったな。

「村田、お前は高校どこ行くんだ?」

「うぉ、何だよ急に?」

 初めの『うぉ』は階段から落ちそうになった声。

「現実逃避の一種と考えてくれれば良し。要するに暇つぶしだ」

 暇つぶしが現実逃避か。どれだけ待つの嫌なんだお前。

「水高だけど」

 水ヶ岡高校。Ⅱ類に受かればよし、落ちれば私立。のつもり。

「ふーん…………水高か。そういや一回も見たことねぇな」

「マジで!? ありえねぇだろ! 絶対一回は見たことあるって」

「嘘吐いてどうするよ。水高って隣町のだろ? まずそこに言った事ねぇから、当然水高も見たことねぇよ」

 隣『町』じゃねーよ。隣『市』だ。水ヶ岡市。

「っはぁー、居るんだなぁ、そんな奴」

「目の前にな。……お、清だ。どうだった?」

 特色の奴からなのか。

「落ちたぁ!」

「悔しいのは分かった。拳は大丈夫か」

 俺等がよっかかってたコンクリ柱、思いっきり殴ったな今。悲惨な音も聞こえた。

「すっげー痛い……。心身共に」

「一般で頑張れよ。数学くらい教えてやるから」

 優しいな、高山兄。何が起こった? それとも何か裏が……

「村田が」

 裏あったぁ!?

「何で俺が教えることになってんだよ!? 明らかに今お前が教える雰囲気だっただろうが!」

「めんどくせぇから」

「じゃあ教えてやるとか言うなよ!」

「っはぁーあ」

 溜息ついた割には負のオーラも何も背負ってないな、高崎。

「でも何で座り込むんだ」

「篠待ち。農業学科の推薦受けてんだよ」

 ほぉ。農業?

「…………ところで、あっちこっちから『落ちた』って声が聞こえるんだけど」

 高山兄、盗み聞きはあまり感心できねぇぞ。勝手に聞こえる? 俺には聞こえんが。耳悪かったっけ俺。

「狭き門なんだろ、きっと」

「きっとじゃねぇ! 狭き門だよ!」

 しつれぇしました。

「あれ~? 何してるの、清くんと純くんと美咲ちゃん」

「山内! 美咲ちゃんそれはまだ残ってたのか!?」

「え~、残って無かったの?」

 残って無かった、と言うか残してほしくなかった。

「桜も受けてたっけか? 私立専願で受かったんじゃ無かったっけ」

「受かったよ~。もう内定決まってるもん。半分寝た状態でふら付いてただけ~」

 紛らわしいな。と言うか、半分寝た状態なのかコレは。いや、絶対完全に起きてる。半分寝た状態っていつの話だ。

「うわ~ぁ、落ちたぁああっ!」

 向こうで女子が抱き合ってる。

 ……あれ? どっちも同じ方向に顔やってるんだけど。頭ぶつけやがった。

「さっきからずっと悪い報告しか聞こえてこねぇよ」

「受かった人は受かった人で自重してるんでしょ~。落ちた人に気を使って」

 一人くらいはしゃぐ奴居そうだけどなぁ。

「ほら~、外に出た瞬間、足取り軽く走り出した人が居るよ!」

 ………………山田。何組かは知らんが山田。なるほど、凄く嬉しそうに半スキップ半猛ダッシュしてたらこけやがった。

「純くん」

 風見。じゃあ高山妹ももうすぐ……なんで俺律儀にずっとここに居るんだ?

「受かったわ」

「そか、良かったな、ゆう」

「ふふっ」

 嬉しそうな笑顔が眩しいが、風見はいったいどこの何の試験を受けたんだ。

「風見さん、どこ受けたの~?」

有山ありやま芸術高校よ」

 …………絵?

「へ~! 絵、上手なの?」

「普通よ。きっと受かったの、ギリギリね」

 絵が上手い奴が自分の描いたものを謙遜すると、俺等の絵はとんでもなくへたくそって事になるよな。

「ん、忍。遅い」

「あははー。ごめん。え、遅い!?」

 反応が遅い。

「柿ピーに何か言われるの出来るだけ少なくしたのに」

「ふーん? で、どうだった?」

「あっはっはー、何せ勉強し始めたの、二学期以降なもんだから」

 …………落ちたんだな。

「でも、第二水高はⅡ類受かっちゃるよ」

 落ちたくせにあっかるいなぁ。空元気とも言うべきか。

「ゆう、忍、待たせた俺に言う事は?」

『ありがとう?』

「よし」

 あ、それでいいんだな……。



 あれ、俺に対しては。

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