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ただいま暴走中!  作者: 呪理阿
2012、如月を暴走
379/410

379 黒き妖怪 根は?

「わお~、ホントに鴉だ~」

「ガリガリかと思ったらけっこー普通だな」

「おっきーねー」

 間近で鴉なんか見たことねぇからなぁ……、そりゃ興味もわくか。

 純だ。

 窓の外に落っこって来た鴉。適当に傷口の消毒だけして餌持ってきてみたけど……。

「静かにしろ~! 暴れんぼ~!」

「痛い痛い痛い、叩くなよ!」

 忍はちゃっかり俺の隣まで後退してるから被害なし。

 それはともかく、滅茶苦茶元気だこの鴉。餌持ってきてやって損した、とは思わねぇけど。どうせ生ゴミだし。

「やー、元気だねー」

「机荒らされんのは勘弁してほしいな」

「純兄、そこ?」

 え? 岳のモンなら別にどうなってもいいんだけど。

「んなぁあああ」

 …………あん?

「鴉どこ行ったよ」

「この黒猫どっから来たの」

『変身した』

 烏が猫にか。どうやったら鳥類が哺乳類になるんだよ。

「この野郎、異世界のモンか。忍、分かるかコイツの言葉。猫だろ?」

「これ何語?」

 無理だった。

 ……まぁいいか。俺は今休みだ。死神じゃなくて人間だ。よし、放っとこう。あ、でも生ごみ処理。

『おい、異世界のどなたかさん、食うか?』

「んにっ?」

 あ、食うんだ……。

「食べてる時大人し~」

「ところで純兄、今の言葉、何語?」

「レレイヤ語。パッと思い出した言語適当に使ってみたら通じた」

「凄いなアンタ」

 俺は行動範囲広いから。死校生徒ん時に色んな世界行ったついでに色んな言語が覚えられた。……レレイヤ語は基本も習ったからこそちゃんと使えるんだけど。

「この鴉猫の食欲もすごいよ~」

 がつがつ言ってるもんな……。腹減ってたのか、単に剣みたいな食いしん坊なのか。骨すら残さず綺麗に食っちまった。

 口の周り掃除すると、力んで……なぜかでかい黒猫……もといクロヒョウになった。

「何がしたかったの」

「背中に乗せて恩返しにどっか連れてってくれるんじゃないかな~」

「遊園地希望!」

 とか言ってる間に、今度はカラスアゲハ。……昆虫にもなるのか、こいつ。

 次はゴキ。

「殺虫剤よぉーい!」

「スリッパよ~い~!」

 岳と光に殺されそうになったところで、今度はダチョウ。……オスなんだ。黒いし。

 三人がぽかんとしてるうちに、黒豚。

「可愛い~!」

 可愛いか?

『うまそー』

 忍、岳、冗談だろうが殺すなよ?

 さらに次、クロダイ。

 ビチビチやられて鬱陶しい。

「今日の晩飯これか?」

 岳に触れられそうになったら、今度は蚊、

 …………潰されるぞ、テメェ。

 本当に潰しにかかった忍から逃れて、炭に。

「炭!? 黒きゃ何でもいいのか!?」

 岳と一緒に言いたかったよ俺も。すでに生き物じゃねぇんだけど。

 で、さらに姿が変わって、かなり違和感はあるけど人間に近い形に。

 肌は白いけど、それが見えるのは口元と頬だけ。顔の他の部分は俯いてるせいもあって髪に隠れてる。さらに全身真っ黒な服でおおわれてる。

 ……違和感ありまくりだな。頭の方には四つ、これまた黒い角が付いてるし。

「あのー……大丈夫ー?」

 片膝ついて、さらに息荒くしてるけど……近寄ってきた忍から逃げる体力はあるらしいな。

『大丈夫か、つったんだよ』

『あ、あぁ……そう言う意味……全く言葉が、分かりませぬ』

 そらそうだろうな。分かったら分かったでこっちがびっくりする。

『飯の感謝を。……どちらの方で?』

『日本の方だけど。そちらこそどちら様で』

『黒変化の黒邪こくじゃ。貴殿のお名前は何と?』

 名前まで真っ黒黒介だな、お前。

『純』

 変化の黒邪……知らん。せめて種族名言ってくれ。無理か?

「純兄ー、置いてかないで。通訳してよー」

「ん? あの人、黒邪って言うらしい」

「それって黒に何か~? 真っ黒黒介だね~」

 この言葉通訳しなくていいよな? 寧ろしちゃいけねぇ気がする。

『純殿、恩返しをさせて欲しいでございやす』

『勘弁してください。飯くらいで大げさな』

『大げさだなんて、とんでもない。とても旨かったんで』

 もう一匹欲しいって言うのならなら期待するな。あれは本当に落ちてたんだから。…………家の前に。嫌がらせかアレ?

『恩返しが無理だと言うのなら、拙者、純殿にお仕え……』

『もっと嫌だ』

 しかもほとんど変わってねぇし。

「純兄ー」

「恩返しさせろ、っつったかと思ったら今度は使えるとか言い出した」

「いいじゃん。面白いよコレ」

 物扱いか。確かに面白いけど。

『うぐっ!?』

 ん?

『は、腹が……さては、さっきの魚に毒が!?』

 俺は入れてない。

『半分腐ったモン食うからそうなるんだよ。拾い食いばっかりすんじゃねぇぞ?』

『拾い食いって!? あれは純殿が出された……さてはあっしに何か恨みでも』

 ある訳ねぇだろうが。

「純! この辺になんか黒い妖怪来んかったか?」

「あ、忍くん」

 コレ妖怪だったのか。

「そこに居る。連れてくのか」

「そう! お前が抜けた穴っちゅーんが意外とでこうてのぉ! 大変なんじゃ俺たちゃ」

「抜けてねぇよ。一か月の長期休暇」

 あ、抜けてるか。

『純殿……何でございやしょ、その怪しげなモノは』

 黒邪、言っとくけどな。テメェの方がよっぽど怪しい。

『死神の忍。黒邪ちゃん、元の世界に帰ろや。つーか帰れや』

 忍、それは脅迫と言う。

『あっしは純殿に恩返しするんで』

 毒盛ったとか何とか言って騒いでなかったか。それでも恩返しすんのか?

『じゃ、黒邪。やっぱ恩返ししてもらう』

『へい』

『コレが一緒にテメェの故郷まで付いて行くから、元の世界に戻れ』

『へい』

「コレ言うな。一応年上やで」

 そっちこそ。俺一応先輩だからな?

『もーえーわい。行くぞ黒邪』

『へい』

 …………腹痛どこ行った。

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