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ただいま暴走中!  作者: 呪理阿
2012、如月を暴走
377/410

377 哀しきぬいぐるみ

 ………………あのぅ、私は一体どうすればよいのでしょうか。ちょっと教えていただけませんか。

 ニンジンとサツマイモの甘煮です。

 私の大きさは冷蔵庫位あります。

 冷蔵庫にもいろいろな大きさがありますが、純さんより数センチ高いくらいです。座った格好で、ですけどね。ぬいぐるみなんで。

 それで、私は一体どうすればよいのでしょうか。

「押し入れから出したはいいけどさー、どうすんのよこれ」

「そもそも何で出したんだ」

「なんでだっけ?」

「言いだしっぺ忍だろーがコラ。それも、もう外真っ暗って頃になってから」

 忍さんと純さんと夏さんに囲まれているのですが。

 いきなり押し入れから引き出されて、座らされて、これですよ。

「何で出したの?」

「その言葉そのままおめぇに返してくれるわっ!」

「いや、なんで理由も分からないまま出すの手伝ってくれたのかなーと」

 あの、理由もなく引きずり出されたんですか私は。勘弁してくださいよー。ずりずり引きずられるのって痛いんですよ?

「なんで手伝ってくれたのって。そりゃ、面白いことでもあんのかと思ったから……」

「ボーっとしてたところに手伝ってって言われたから」

 純さん、貴方意外と単純なんですね。

「どうもありがとう」

『どういたしまして』

 ………………あれ? 終わりですか!?

「で、どうするよコレ。出したからには何か役に立ててから片付けんと、損した気分しか貰えんよ」

 夏さん、十四、十五の貴方達にぬいぐるみってどう役に立つものなんですか。

 そして私からすれば、貴方達三人に良い思い出は無いのですがっ!

 十年くらい前の話ですよ。

 この子達はもう、体当たりして来たり、蹴って来たり、殴って来たりと滅茶苦茶やって来たんです! 子どもだったからですか!? この私のやわらかい体なら、どんな衝撃でも止められると思ってたんですか!? いや実際止めて見せましたけど!

「やっぱさ、ニンジンとサツマイモの甘煮と言ったらこれでしょ」

 そう言って忍さんは私の胸のなかへダーイブ! ぐほっ。

「楽しいよなー。でもそれ、俺がやったらどっかで頭打つわ」

 そうですね。夏さん、いつの間にか私より数センチほど高くなってますから。……いつの間に。

「あー、やーらか」

 ふふん。さっきのタックルはいただけませんが(いただきましたけども)気持ち良さそうにしてくれるのは嬉しいですね。

「忍、寝んなよ?」

「………………」

 あれ、忍さん? 夏さんが寄ってきて、片膝ついて、顔を覗き込んで、

「……寝てやがんの」

 凄いですね忍さん! この一瞬で!?

「演技だろ?」

 演技ですかっ! ……いやでも、寝たままですよ? 呼吸もゆっくり……。

「演技だけども眠いのはホントー。何でこんなに眠いかな」

 って、本当に演技だったんですか! コロッと変わりましたね!

「ん、忍。時計を見てみろ」

「ほい。何処?」

 ……壁になんかかけてませんもんねぇ。理由は『秒針の音がうるさいから』音出ない奴もあるって聞いた事があるんですけど。

「机に置いてあんだろ」

「あー、ホントだ。十時十五分。眠い訳だ」

 貴女いつもこの時間は起きてますよね。扉が開く際に見えますよ、貴女が机に向かってるトコ。

「昨日寝たのも遅かったし、今日は起きるの早かったし。眠い」

「寝れば? 風呂入ったんだろ」

 ……それで少し髪が湿ってたんですね。

「あれ、それパジャマ? 普段着かと思った」

 私に言わせればどのパジャマも普段着と見分けがつきませんが。だって私、服着ませんから。

「そうしよー」

「…………なぁ、俺が呼ばれた意味は?」

「特になーし。それじゃお休み」

『お休み』

 ……純さん夏さん、貴方達、忍さんに振り回されただけじゃないですか?

「俺も寝る。忍の様子見てたら眠気がうつった」

「じゃー俺も帰るわ。何故か眠い」

「んー」

 ……いやほんと、振り回されちゃいませんか。

 そして、一番振り回されてるのって私じゃないですか。しかも最後は放置かぁっ!

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