373 夢か現か
今朝玄関から出たら、目の前を歩いてた人が消えた。
穴でも開いてるのかと思って見に行ったけど、穴は開いてない。
……あれ、これって怖いんじゃない?
ま、いいか。普通に学校に向けて歩き始めた。
また、前を歩いてた奴が消えた。
流石に二回目は怖い。
消えたあたりに行って、穴が開いてないか確認する。周りを見回す。
宇宙人でも来てるのか思ってと空を見上げたけど、当然なにも居ない。
でも、よく考えたらどうしようもないし。学校に向かって歩き出す。
三人目。
…………絶対消えるぞ。誰か消えるぞ。次どいつだ。
あいつか、こいつか。周りを歩いている奴が気になってしょうがない。
しかーし。
期待するとなかなか消えない。普通に学校についちゃった。
そう言えば、一番目と二番目、消えたの誰だっけ? 知ってるような知らないような。知らない奴だったような知ってる奴だったような。
とりあえず教室に入って周りを見回してみる。
……全員居る。
何事も無かったかのように授業が始まった。
別に誰も人が消えたなんて話してないし、気のせいだったのかも。
いやいや。確かに消えた。
授業に身が入らないまま(いっつも入れてないけど)、ぼーっと柿ピーもとい牡蠣野先生を見ていたら、突然柿ピーが消えた。
「うわっ!?」
誰かが声を上げる。当然だわな。
「やったぁ!」
周りからも色んな声が上がる。
「授業どうすんだよ……」
とりあえず、柿ピーが消えたあたりに皆が集まる。
穴も開いていないし、変な光線なんか入ってこなかったし、これってもしかして大事件なんじゃないの?
誰かが、
「机のなかよく探せ! 柿ピー失くなった!」
と言って、皆が机の中を覗き込んだ。……柿ピー、物?
「居た!」
そう言って、田中さんが柿の種の大きさになった柿ピーを彼女の机からつまみ出した。
「あー良かった。居なくなっちゃったのかと思ったよ」
「いや、十分大変な事になってるからね」
小っちゃくなった柿ピーが何か言っている。
耳を近づけてよく聞いてみると、
「こら! 皆なんで急に大きくなったんだ!」
大体こういうときって展開決まってるよね。
夢か何かに違いない。
「お休み」
「現実逃避するな!」
叩き起こされてみると、突然周りが大きくなり始めた。
周りから声がする。
「忍が消えたぁ~っ!」
「またどっかに隠れてるに違いない! 探せ!」
頭の上を皆が走り回っている。
……踏み潰されたらたまらん。とりあえず避難しよう。
机の中に逃げ込んだところで、なっくんに見つかった。
「居たぞー!」
『良かったー』って声がする。
いいもんかぁああああっ!
ただでさえ家まで歩いて十分以上かかるのに! この大きさじゃ家に帰れないじゃないかっ!
ん、ちょっと待てよ?
純兄がいるじゃん。連れて帰ってもら……純兄も小さくなっていた。呑気に寝てられるのはなんでだ。
あれ? ってか、小っちゃくなったのに誰にも気づかれないってどゆ事?
純兄だけかと思ったら、皆次々と小さくなっていく。
この世の終わりかっ!? まさかね。何にせよどーなるんだ。
人間だけじゃなく、机やら椅子やら、あれもこれもどんどん小さくなり始めた。
十分もすると、全部小さくなってしまった。
……元に戻ってんじゃん。
柿ピーが授業の続きを始めた。すげーなアンタ。
何事も無かったかのように授業が続いていく。すげーな皆。
……頼むから何もデカくなるなよ。
授業が終わって窓の外を見てみると、いつもの風景が広がっている。
なんかすっごい、複雑な気分。
…………で、目が覚めた。外は暗い。時計を見たらもうすぐ十二時。
夢にしちゃやたらはっきりしてたけど、なぁ?
不思議に思ったらこの人に聞こう。
「じゅーんにー」
「寝たんじゃなかったのか?」
「変な夢見て起きた」
「皆が小っちゃくなる奴? 夢だ」
「なんだ。……お休み」
「ん」
あれ、なんで純兄知ってたの。あたしの夢。