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ただいま暴走中!  作者: 呪理阿
2012、如月を暴走
370/410

370 読書は好きだよ

「ただいまー……あれ? 姉ちゃん、今日は勉強してねーの?」

「……何、岳。その珍獣でも見るような目。元はこうだったでしょーが」

「いやまぁ、そうだけど」

 認めるんか。いや、あたしが言った事だけども。

「最近勉強やってることの方が多かったからさー」

 そーだっけ? そうかも。あれ、そうだっけ。

 うん、どちらにしてもね。受験の前日に勉強するのはあたし好かないの。それが併願の私立でも。

 忍です。

 帰ってから適当に着替えて、本読んでいます。図書室で借りてきた冒険ファンタジー。まぁ、厚いっちゃ厚いけど、半日あれば余裕で読める。うっかり数行飛ばして訳分からんことになるのはよくあること。

「あ、そうだ」

「何だよ?」

「お帰り」

「……あ、うん……って、それだけ!?」

 挨拶は大事でしょ?

「光は?」

「そこで寝てる」

 そこ、と言うか、ここ。

 あたしはソファーの隅っこに縮こまって本読んでるんだけど、その反対側の隅っこに体埋めて、純兄も本読んでるんだ。あたしが借りてきたはずのを。

 片足立膝にして、もうかたっぽは膝枕に……いつの間にされたんだろう。とにかく、そこで光が寝てる。そろそろ起こしてやんないと眠れなくなるかな。

「ふーん。姉ちゃん達、何読んでんだ?」

「あたしのはレノの旅」

 なんとなく目に入ったから、なんとなく借りたんだけど、結構面白い。

「兄ちゃんのは?」

「ん……霊狩り……」

「ふーん……」

 これもファンタジー。幽霊を狩るって内容……じゃ、ないかなぁ? タイトルが霊狩りだし。まだ読んでない。

「面白い?」

『うん』

 あ、霊狩り、面白い?

「んじゃ後で貸してくれよ」

「ほいな」

「ん」

 岳も面白い本は好きよな。あれ、岳どこ行くのー。二階に上がってった。宿題でもするのかな? ……かなぁ?

「純兄、それ面白いの?」

「ん……テメェが借りてきた本だろ……」

 まぁそうなんですが。

「まだ読んでないんだよ」

「ふーん……」

 もうこれ以上は反応してくれそうにないな。

 きっと今頃、純兄の頭の中ではキャラクターが駆けずり回ってること間違いなし!

「純兄ー」

「…………」

 ほらね。

 あたしも本の世界に漬かっちゃおう。うん。

「あふ~……おはよ~」

 …………。

「う~、返してくれたっていいのに~。ちょっとくらい本の世界から顔出してくれてもいいのに~」

 ………………。

「お姉ちゃんも挨拶は大事って言ってるくせに~」

 ……あ……何だか似てると思ったら、この二人姉妹だったのかー。

「も~、どこかに反応してくれる人居ないのかな~! 幽霊でもお化けでもいいんだけどな~!」

 うわ、キィだ。この人使い捨てのモブキャラじゃ無かったんだ!

『私を呼んだ?』

「う~ん~……話し相手を呼んだからあなたを呼んだって事じゃ~……どっちでもいいや~。話し相手になってくれる~?」

『喜んで!』

 …………………………あれ?

 誰だ、光と話してるあの幽霊。

「忍、返す」

「あーい、あれ、もう読み終わったの?」

「ん」

 早いなぁ。もっとゆっくり読めばいいのに。いや、決してあたしが言えることじゃないことは自覚してるけども。

「で、光? どちら様だ」

「ふ~んだ~」

 ……無視したから怒ってるのか。幽霊ちゃんまで一緒に。岳と同い年くらいの女の子……何でまたこんなところに。

「純兄、狩っちゃ駄目よ?」

 いや、なんとなく。霊狩り、なんて本読んだ後だから。

「今更? 忍、死神がさ、幽霊を冥界に送ることを何て言うか知ってるか」

「知ってるわけ無いでしょ。何も話してくれないもん」

「あぁ、そうか。《霊狩り》って言うんだ」

 ……マジでか。

「ま、その本で霊を狩るのは人間だったけど。しかも、狩るって言っても言葉で。説得なり未練を解決するなりして」

 そりゃーそうだろうなぁ。

「でも俺は本当に狩る方が好き。さぁどうする?」

 あたしに振るな。そーゆー発言する純兄が人間としてどうするよ。今は違う? 元は人間でしょうが。

「で~、お姉ちゃん達何読んでたの~?」

 あ、光、機嫌直った?

「あたしはレノの旅、純兄のは霊狩り」

「おもしろい~?」

『うん』

「じゃあ後で貸して~!」

 ……コレ、いつ図書室に返せるかな。

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