37 かっぷけーきっ
「忍、桜に明日何かお返しするとか言ってなかったか?」
「……? ……?? ……あっ! 明日って14日!?」
「忘れてたのかよ……」
わーッ! 完全に忘れてたよ!
それこそ欠片も覚えてなかった!!
危な~、バレンタインも忘れてたのにまた忘れる所だった。
よかった、思い出せて。
「純兄、感謝」
「ん」
さて、何作るかな。
ゼリーは絶対持っていく途中で崩れる。
ってかジュース無いし。
ケーキ……食べたい。けど面倒。
チョコはー……湯せんとか面倒。
まず買いに行かないと無いし。
おかーさんのつまみ食い用ならあるけど。
クッキー。絶対粉まみれになる。
後寝かす時間もいるから結構時間かかる。
ん~、どーっすかな。
「あれ~? お姉ちゃん何か作るの~?」
「うん。カップケーキ」
カップ無いけど紙コップでいいし。
後は簡単だし。
「じゃ~、私紙コップ切っといてあげるね~」
「ん? いいの? ありがと。一個あげるね(きっと)」
「うん~」
……あ、光の奴、これが狙いだったな?
ま、いーや。手間が省けるわけだし。
えーっと、卵(一個)を割って崩して混ぜて、
砂糖(大さじニ)を入れて、混ぜて。
牛乳(50㏄)入れて、あわ立てるように混ぜる。
ベーキングパウダー(小さじニ)……あれ、何処にあったっけ。
引き出しその一。
麺棒、菜ばし、その他諸々が整理されてんだかされてないんだかよく分からん状態で入っていた。
うん、無いね。
引き出しそのニ。
ラップ×2とオーブンペーパーとアルミホイルは整理されて、後ビニール袋が適当に入ってた。
うん、無さそうだ。
引き出しその三。
鰹出汁やら炭酸(粉)やらドライイーストやらが……って、
「ドライイースト!? 冷蔵庫入れろよおかーさん!」
しっかり《冷蔵庫で保管してください》って書いてあるよ!?
とりあえず冷蔵庫のドアポケットに突っ込んどいた。
今晩、おかーさんがドライイーストを探して引き出しを何度もあけたり閉めたりすることをあたしは知らない。知る気も無い。
あ、あったあった。ベーキングパウダー。
で、小麦粉(100g)とベーキングパウダー一緒にふるいにかけて混ぜて……。
はい、生地かんせー。どんどんパフパフー。
「はい~、お姉ちゃん~」
「ありがと……って、三つでいいんだけど」
六つもいらないから。
三個分しか作ってないし。
「え~」
「え~じゃなくて」
「お姉ちゃんと桜ちゃんと私と死神トリオのぶんだよ~? ピッタリでしょ~?」
……死神トリオの事とか頭の片隅にも置いてなかったんだけど。
「死神トリオの分はひか……あ、いや、なんでもない」
危ない。光にトリオの分任せる所だった。
「分かった~、斬くんと作るからレシピ貸して~」
「アンタはレシピどおりに作らんだろ!」
って言うか何で斬となの!?
キングコブラも真っ青な毒を作る気か!?
……流石に無いかな、そこまでは。
「ざ~んく~ん~」
……本気でやる気だ。
「天ー! ……ついでに剣!」
「……何」
「何だ?」
「オレはついでなのか!?」
……できれば扉から入ってきて欲しい。
何で窓からなの。
「斬くん~、カップケーキ作ろ~」
「……かっぷけーき? クスリ?」
違う違う違う。
「天と剣はあの二人がこれ以外のものを入れそうになったら全力で阻止してね」
「……分かった」「……りょーかい」
おぉ、何か暗くなった。
「アンタ等が食べるやつだから」
『分かった!!』
わぅ、すっごいやる気になってくれたよ。
やる気、というか必死?
二人と光にレシピを渡して、よし、あたしは再開。
紙コップの半分から上を切り取ったもの(以下カップ)の内側にサラダ油塗って、
カップの半分より少ーし多めに生地入れて、
大き目のラップをふわんってかけてレンジに入れる。
一分位で取り出してくし刺して余計なもの(どろっとした生地)がついてこなければそれでよし。
「あ、チョコいれりゃよかったな……おかーさんの」
ラップかける前にチョコ入れるとチョコケーキになるし。
「待て待て待て待て! お前等何を作る気だ!?」
……聞こえないよー。
天の叫びなんてあたしには聞こえないよー。
斬の手の上に乗った赤紫色(気泡あり)の小瓶も光の手に乗ってる痛んだぽんかんも見えないよー。
剣の足元凍ってるのも見えないよー。
さーて、後二つもちゃっちゃと作ろっと。
数分後出来た光たちのカップケーキは天と剣の頑張りにより普通な出来だった。
天と剣は……うん、もんの凄く疲れた顔してた、とだけ言っておこう。