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ただいま暴走中!  作者: 呪理阿
2012、如月を暴走
368/410

368 しのぶちゃんにっき

 ……押入れって、たまにえらくなっつかしいモン出てくるよな。

 純だ。

 押入れの上の小さい押入れから、何か紙みたいなのがはみ出てたから出してみた。

 青いチェック柄の表紙した日記だった。古そうだけど、結構綺麗…………ん? はみ出してたのどの部分だ? あれ?

 ……いっか。気になることは気になるけど、知って何か得するわけじゃなし。

 で、この日記誰のだ。

 裏表紙の『なまえ』って書かれてる欄にネームペンで大きく『たか山しのぶ』って書かれてる。……誰かに提出する訳でもないのに。変なところ几帳面だな。今なら絶対書かねぇだろうけど。

『1月1日 はれ

 やっときょうから日っきをつけられる。11月の終わりからまってたからうれしい』

 …………あぁ、折角元旦が近いからわざわざ一ヶ月待ってたんだな。何で十二月からじゃダメだったんだ?

『きょう、おじちゃんのうちでおしょう月のおいわいをした。おみくじは凶だった。凶って何て読むの?』

 周りの誰かに聞けよ。

『ってきいたら、じゅんくんが「きち」っておしえてくれた』

 あぁ、ちゃんと聞いたのか。でも多分それ、その年の俺のおみくじ。

『1月2日 はれのちくもり

 おせちはまだまだのこってたからたべた。くりきんとんっておいしい。うちもつくりたいとおもった』

 今まで一回も作ってねぇけどな。

『そとがくらいからてるてるぼうずをつくった』

 んー、俺は曇や雨の方が好きだな。

 話が急に変わる事はまぁ、書いてるの小一、小ニ位の奴だしな。

『それをさかさまにつるしたから、ふれふれぼうずになった』

 あぁ、そう。忍はそういう奴だ。

『あした雨になぁーれ!』

 ここが天気だったら可愛いのにな。雨って書かれてると『微笑ましい』というより『苦笑が漏れる』の方が正しい。

『1月3日 はれ

 ふれふれぼうずのくびをちぎった』

 あ、やっぱりやったんだ。

『じゅんくんもちぎってた。たけるもちぎった。ひーちゃんはしゃぶってグチョグチョにした』

 赤んぼだからな。……俺が参加してたことについては驚けない。小学五年か四年の時にもやってたから。

『いっぱいあったからおかあさんにおこられた』

 だろうなぁ! あの時にも怒られた。つまりなんだ? こりてねぇってか。

『1月4日 はれ

 おかあさんのたんじょう日だから、いそがしい。ケーキがたのしみ』

 この日はこれしか書いてねぇな。そのくせケーキのことはしっかり書いてやがる。

『1月5日 雨

 足がぐちょぐちょして気もちわるかった』

 降ったら降ったで文句言うのかよ。

『おかあさんとでんわしてるのはおとうさんで、おとうさんはなべにしようっていったっておかあさんがいった。でも、きのうもなべだった』

 親父、鍋好きだからなぁ。土日のどっちかは鍋になる確立が高い。反対されて変わる事もよくあるけど。

『じゅんくんと一しょにいやだって言ったら、たけるもやだっていった。おかあさんはエビフライにしようっていった』

『岳はよく分かってなかったけど、俺等のまねをした』に一票。絶対そうだ。

『でも、おとうさんは、すきだからっていわしをかってきた』

 きっと残念がっただろうな。エビフライ好きだから。さらに言うと、魚全般嫌いだったから。

 晩飯エビフライだと思って楽しみにしてたら、嫌いな魚を持って帰って……うん、きっとじゃなくて、間違いなく残念がった。というか拗ねた。

『でも、おかあさんはいわしがきらいだった』

 あれ、そうだったっけ?

 大人が好き嫌いしてるのって良く分かんねぇのに、よく気付いたな。それか母さんが自分で言ったか。

『みんながすきっていってるものはちがうなぁとおもった』

 十人十色、ってか。小学生の癖にやったら大人びた事を。

『九月三十日 ほこり』

 あれ!?

 えらく飛んだ、と言う以前に、なんで天気の部分が『ほこり』になってんだよ。

 字もまた、随分小さくなってるし……。

『本だなに日記が入ってるの見つけた。そういやあったな、こんなの。ほこりまみれなになってたから、天気はほこり。正しくはくもり。どっちにしろ灰色』

 ……数ヶ月どころか数年飛んでやがる。

『このノートもったいないな、と思いつつ続ける気はさらさらない事をここに記すー。って、書いたら何てつっこまれるかな?』

 自分でつっこめるだろ。

「純兄、何読んでるの?」

 ん、忍か。

「あった奴。はい、返す」

「え? あたしの?」

「そ。勿体ねぇな、そのノート」

 無反応でぱらぱらとめくって見てるけど……。

「ほんと、勿体ないなー」

 …………………………終わりか?

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