361 インフルには気を付けよう、今日は二人組
「はー、翔だけならともかく、修也まで休みたぁ、びっくりが止まんねーよ」
「岳くん! びっくりって止まったり動いたりするものなの!?」
『翔だけならともかく』って部分にゃ何の反応も無し? そりゃねーぜー奈那子さんよ。それを言ったオレが言うのもなんか変だけどさ。
「ねぇねぇ岳くん? びっくりが止まらないってどういう状態!?」
「っせー」
「っせー? どういう意味」
「五月蠅いって意味な。…………って、分かれよ」
「言ってくんなきゃ分かんないよそんなの!」
えぇー? 分かるだろー。
「あ、奈那子さんは馬鹿だったな。悪ぃ」
「今の言葉を謝ろう!」
やだ。
「しっかしなー。これでインフル原因の休み四人目だぜ。そろそろ学級閉鎖しちゃ駄目か?」
「駄目とか言う問題じゃないでしょ!」
「いやいや、奈那子さん。五人休んだら学級閉鎖らしいぜ。あっとふったり!」
せんせが『二割が休んだら考える』っつってたからな。このクラスは二十五人だし。…………五年もっと人数多いのになー。
「もう! 岳くん、学級閉鎖なんかになったら、春休みも授業……」
「オレ等卒業だし、それはねーだろ」
他の学年なら知らねーけどな!
「ん、そーいや、今日光達休みなんだよなー。いーなー」
「妹ちゃん? 四年生学年閉鎖なの!?」
「んーや、学年閉鎖」
「学年!?」
「なんで知らねーの!?」
昨日から言ってたぜ!? 休みなのは今日からだけど、十分話題にゃなってただろ!
修也も『いいなー』とか言ってたし。きっと罰が当たったんだな、今日インフルになってんのは。
……………………オレも気ぃ付けよ。
「さて」
「ん?」
「何すっかな」
「勉強したら?」
「おめーがな」
「怒るよ!?」
もー怒ってんじゃんか。
「何だ? 今日は古閑とやるのか?」
おーい、誰だ、今言ったの。丸聞こえだぜ、小声のくせに。
「なぁ奈那子さんよ。何か期待されてるっぽいぞ」
「何を!?」
聞こえてなかったのかよ。
「追いかけっこ。オレと」
「ヤダもんねー!」
……これ言ったらどうなんのかな。
「すなわち、修也の代役」
「やってやろーじゃんか!」
マジか!? ……すげー、コイツ。修也の代役だったらなんかあんのか? なぁ、何があるんだ? 頼むから教えて。
「修也の仇ぃ!」
「修也死んでねーよ!? しかもオレ関係ねーだろ、インフルに関しては!」
「……言ってみたかったの」
ちょっと顔を赤らめて、視線を外して…………。
『キモッ』ってこと言うのはオレのポリシーに反するので、大人の対応をば。
「お前意外と可愛いのな」
「駄目! あたしには修也が居るの!」
昼ドラ?
「言っとくけど、可愛いと好きってーは別だからな! 知ってた!?」
あれ、何も言わないのが大人の対応だったんじゃね?
「良いか、ぶっちゃけ可愛いってーのはなぁ……あーゆー子のことを言うんだ!」
オレが指した先には理絵。もじもじしてても可愛いよアイツは。今度は何か顔覆って蹲っちまったけど。……ごめん。そんなに恥ずかしかったか。
「あぁ~、もしかして岳くん、りっちゃんのこと好きなの!?」
「んーや。可愛いと好きってーのは別だっつったろ」
今更ながら、女子相手に何話してんだろオレ。
「大体理絵の好みは修也だろ?」
……あ、どっかに逃げちまった。ごめん、ほんっとにごめん! つい!
「マジで!? え、りっちゃん修也が……え?」
「フラれてたけど」
「ほっ」
『安堵の息を吐く』って、今の奈那子さんにまさにピッタリだな。
「でもねぇ、修也狙ってる女子なんていっぱい居るって話じゃねーの?」
「何処の話ッ!?」
この学年らへんの話。ま、いっぱいっつってももちろん一部だけど。
「って、うわ、奈那子さーん。箒振り回すのはあぶねーぜ?」
「何処の話ッ!?」
どうしよ、この人殺気立ってる。紫と黒が交じった色のオーラが出てる。
インフルよりこえーぞ、コレ。