360 甘党なんです
「お姉ちゃん勉強終わったの~?」
「んーや、休憩」
「ふ~ん~。休憩に一切れ食べな~い~? 糖分補給だよ~」
光、また何かお菓子作ったのか? オレも欲しいなー。
岳だ!
光が料理上手くなると、こんなに作ったモンが楽しみになるなんて思ってもみなかったぜ。
で、何作ったんだ?
「おー、ロールケーキじゃん。作ったの?」
「うん~。これにイチゴとかバナナとか生クリーム入れたら太巻きに見えるかな~? 生地が海苔~」
包んである黄色いのはカスタードか? 生地は茶色だし、何だかチョコバナナロールに見えんな。
「残念ながらこれが太巻きにはちょっと無理が」
「え~っ!」
「海苔と全然色違うもん」
薄めの茶色だもんな。海苔っつったら、緑っぽい黒だし。
「あ、でもおいし」
「えへへ~」
表情の変化が単純だなおい。数秒前はむすっとしてたくせに。
「お兄ちゃんも食べる~?」
「うん」
「は~い~、どうぞ~」
「あんがと」
一切れなっが! 五センチくらいあんじゃん。一本って言っていいよな。側面の方がなげーもん。
しかも元々が細いから……ぐるぐる部分だけ見えるようにしたらでかめの一口サイズなのに、そうでない部分見たら二口は絶対必要だな。
「ん、ふはいは」
「腐敗葉~? 失礼な~。腐敗なんかしてないし~、葉っぱでもないよ~!」
誰がんなこと言ったよ。口に入ってたから上手く言えなかっただけじゃん。
「うめーなっつったんだよ」
「ウソだ~、旨いなって言ったでしょ~?」
分かってたんじゃねーかよ! 何でわざわざ言い直させた! いや、オレが勝手に言い直しただけだけども。
「あら~、おいしそうなケーキ~。チョコバナナ?」
あ、母さんも同じ事考えたんだな。
「ココアとカスタードだもん~!」
中身はカスタードで合ってたんだ。
「お母さんにもちょうだ~い?」
「いいよ~! は~い~」
あ、母さんのの方がオレよりでかい! 別に文句言う気はねーけどよ。もう一切れ貰う気満々だし。
「おいし~、生菓子みたいね~」
「生じゃないよ~」
「でも生菓子みたいだもの~」
「カスタードも火にかけるから生じゃないも~ん~」
両者譲りません。どっちにしろ生じゃねーらしいけど。
「あれ? 姉ちゃん何やってんだ?」
食器棚の中のビン開けて……あれ何のビンだったかな。
「しー」
「『しー』って言われても何が『しー』なのかわかんねーよ。何言っちゃいけねーの?」
「あたしがやってる事」
あ! 角砂糖食ってる! 角じゃねーけど。丸いけど。
「オレも欲しい」
「そっから取ったら?」
……最後の一個じゃん。
前に見たとき、ビンいっぱいになるくらいあったんだけどなぁ?
「……姉ちゃん、何個食った?」
「さぁ?」
分かんねーくらい沢山食ったのか!?