358 見て見て! この間違い!
「兄ちゃん、姉ちゃん、母さん。見てこれ」
『ん?』
岳が手に持ってんのは……テスト?
何で岳笑ってんの?
忍でーす。
勉強のちょっと休憩中。りんご丸かじりしています。
あれ、これちょっとって言わなくない? と思い始めたところで岳がやって来ました。
「百点だったの? よかったねー」
「百点じゃねーよ。百点でも別に『よかったねー』言われるために持ってきたりしねーし」
冷めてるなぁ。
「で、どしたの? そのテストにまさか漫画が描かれてるとか? 読まして」
「なんでだよ!」
ちぇ、違うのかぁ。いや、分かってたよ? もちろん。
「見てってば。うっかりで十点落とした!」
「威張んなよ」
うんうん、どれ?
テスト裏側にある四角の二番。量を表す単位を書く問題。
『①地球と月の間の距離・・・約38万《㎏》』
「……重いな、地球と月の距離」
「だろ?」
㎞との間違い……。ちゃんと見直ししようよ。いや、あたしもやって無かったけどさ。小学ん時は。
と言うか、やり始めたの二年三学期の中間テストあたりだよたぶん。
「岳~、見直しはしないとダメでしょ~」
と言うか、あれ? ここしか間違えてないのに十点落としてるの?
「一つの問題にかかってる点数も重っ」
「……俺は一問しか問題が書かれてないテストやった事あるけどな。百点満点の」
一問!?
「百点か零点しか無いじゃん!」
「途中式に点がもらえるから、それは無い」
あ、数学なんだ。
「解けた?」
「解ける訳ねぇだろ。一問しかねぇイコール滅茶苦茶むずいんだから」
ふーん。
「で、何点だった?」
「……五」
「マジでか」
「ん。あのな、それやった時俺小六。出された問題何だったのか聞いたら大学受験の問題だって」
よく点取れたね!?
「あれ~、岳~……これ一回正解書いてたわよね~?」
ん? 今度は表面? 百点満点中九十五点。
「あーうん、それ、書いた後でなんか違うような気がして書き直したら、書き直したのが間違ってた」
あるよねー。……ってか、あったなー。
イラッときて、その部分だけ千切ったなぁ。小学……中学年か高学年の時。
全部びりっびりに破こうとしたらクラスの誰かに止められた。誰だろう。
純兄は高みの見物決め込んでたし、なっくんは爆笑中だったし、香ちゃんはニコニコしてみてただけだし。うん、きっと名前を忘れてしまった誰かさんだ。どうでもいい人なんだろうなきっと。
「お母さ~ん~、あ~、お姉ちゃんとお兄ちゃん達も居た~。見てみて~」
おはよう、光。さっき見たときお昼寝してたけど起きたのね。
で、なんで光もテスト?
「漢字テストじゃん。すっげー、八十八点? すげー」
「えへへ~、凄い~?」
「オレは漢字苦手だから、すげーよ」
最低点二十点代だもんね。百点満点中。あたしも漢字苦手だけどそこまでは行かなかったよ。
…………うん、五十点は切らなかったはず。確か。
「で、どこ間違ったの?」
「まずここでしょ~」
どれだろ。あぁ、これか。
『四十.空を飛ぶヒコウキ』
光の答えは?
『飞行机』
…………いくら楽だからって、簡体字つかっちゃ駄目だろ。
「光、どうせならこう書けよ」
と言って純兄が書いたのは?
『飞机』
「中国語じゃん!」
『中訳しなさい』じゃないんだから……。
「ん、よく分かったな」
「おばーちゃんに教えてもらった」
楽だよーって。
『手紙』が中国語だと『トイレットペーパー』って意味になっちゃうって事とか。ちなみに手紙は『信』だってさ。
多分光もおばーちゃんから聞いたんだね。
「こんなのもあるよ~」
商品か何かですか、間違いは。どれ?
『なっちゃんを柵でカコむ』
誰!? なっちゃんって誰!? なっちゃん策で囲んでどうするの!? 誰だこの問題作ったの!
……で、光は何て?
『なっちゃんを解放してあげて』
うん、そうだね。わざわざカッコの外に書いといたんだ。
答えの方は?
『井』
……………………確かに解放されてる……かな?






