354 雲を見ながら想像中の四人組
「あー、あの雲、煙みたい」
「翔、せめて形がはっきりする奴探せよ。なんだ、煙って」
確かに煙っぽいけどさ……うっすらもやもや灰色の雲。
修也だよ。
帰り道、奈那子は家が反対方向だから、岳ん家行くのに一回帰ってランドセル置いてきたから手ぶら。
俺と岳、翔は同じ方向だからまだランドセルは背負ったまま。
で、その帰り道で、皆揃って何故か空を見上げてる。
最近雨だったり曇ってたりでずっと空は灰色だったけど、今日は青い所も見える。……授業中に行き降ってたような気もするけどな。
「あ、あれ、バスケットみたい!」
「バスケットボール? なんでバスケットボールなの? バレーボールじゃダメなの?」
「翔くん……バスケットって、カゴの方! フルーツバスケットとかのバスケット!」
奈那子、その例えじゃ翔の場合『あれって見えるモンなの!?』とか言い出しかねねーぞ。
あ、言わなかった。
理由? 言い出しかけた途端、岳が頭はたいたからだよ。まだ言ってないにも関わらず。ドンマイ翔。
「あ、あれ、サンタの上半身みたいじゃね?」
「どの雲? あの灰色の塊?」
それっぽいのは一個しかないけど……進行方向、ちょっと上らへんに。
「そうそう。横から出てるのはプレゼントの袋でさ、反対側から出てるのは手。多分湯飲みでも持ってんじゃね? 湯飲みを持ったサンタ、横から見た図」
サンタが湯飲み持って……? 変な組み合わせだな。
サンタがずずっと緑茶すすって『あー、いいお茶』とか言ってんのか? ……似合わないって事は無いな。サンタってお爺さんだし。
「あぁ! 見えなくは無いね! ……でも、サンタ湯のみ持ったままどうやってお茶飲んでるの?」
『湯のみ持たないでどうやってお茶飲むんだよ!』
岳翔俺のトリプル突っ込み。
「あ、あ、間違えた! プレゼントの袋持ったまま、の間違い!」
「まぁ、分かるよ。何が言いたかったかは分かってたよ」
うん、翔に同じ。でもなんか突っ込んじゃう、それが六年二組。
「んじゃぁ……雲の形がちょっと変わったから……プレゼントの袋背負って、キセルを持ったサンタ!」
キセルって……えぇと、パイプに似てるやつか?
「銀〇に出てくる、高杉〇助が吸ってる奴!」
銀〇見てないし。読んだ事もないし。なんで翔も奈那子も『あぁ!』って言ってんの? 何で分かんの?
「よーするに日本の喫煙道具の一種だよ。修也ちゃん? パイプに似てるけど、あれより煙草入れるところが小っちゃいし、全体的に細長いけど」
「……なんでそんなに詳しいんだよ」
「漫画とアニメで見た。ついでにパソコンで画像も調べた。さらについでに使用方法も。パソコンって便利よな」
すげぇなお前。漫画やアニメに出てくる小道具一つをそんなに調べるか?
修也ちゃんはムカつくけど。
「で? それをあのサンタ上半身雲は吸ってるって……ミスマッチ」
「それはオレも言ってて思った」
思ったのかよ。
「で、ちなみにあの口周りでもやもやしてるのは煙」
「翔くん、なんでそんなに煙好きなの!?」
「だってそー見えるんだもん!」
煙草ならそりゃ煙も出るだろうけどな。
「あー、なんかまた形変わってね? 今度はあれだ、熊」
一気に変わったな。人間じゃ無くなった。
あー、確かに、下のほうに尻尾みたいなのがある。ペタンってお尻つけて座ってる熊だな。ぬいぐるみによくあるポーズ。
「湯のみ持ってる」
「岳くんは岳くんで湯のみ好きだねっ!?」
「だってそー見えるんだもん!」
翔の真似はしなくていいから。
「んじゃ変えるか」
「燃えてるんだよ。お腹の辺りが。で、手に見えたのがだんだんもわもわしてきたから、あれは煙」
翔……何があった!?