349 事件発生
「段ボール貸してー!」
「あれ? ガムテープ何処?」
「ここ誰か中から抑えて!」
や~、皆忙しそうだね~。
光です~。
水小祭りの準備中~。初めてのコーナー作りです~。四年生以上からしか作れないからね~。
私はカッターやガムテープ、定規等々普段から持っている文房具を総動員してお手伝いです~。
貸すだけ貸したら自分が使う道具がなくなっちゃった~! なので一歩下がったところから鑑賞中~。
……う~ん~、言い訳にはしょぼいかな~。段ボールアレルギーなんですぅ~とか~? う~ん~……。
真剣に何考えてるんだろう私~。
「ひーちゃん! ちょっと手伝って!」
「は~い~」
すぐにちょっとした手伝いに飛び回れるようスタンバイしてるんですぅ~! これがいいや~!
「で~、はーちゃん何~?」
「このダンボール、繋げるんだけど自力で立ってくれなくて……支えておいてくれる?」
「りょうか~い~」
私のクラスのコーナーは段ボール迷路~!
お客さんには段ボールの中をくぐってもらいま~す~。ゴールできたら商品を~。……今更ながら~、迷子になったらどうするんだろう~。
段ボールを繋いで繋いで~、分かれ道が一つできました~。まだまで繋げるよ~。
どんな風になるんだろ~。設計図も何も作ってないから誰にも分からないんだ~。
「光ちゃんこっちも頼むよ!」
はいはい~。恵利奈ちゃんちょっと待ってね~。はーちゃんの手伝いがもう終わるから~。と言うか終わったからもう待たなくていいや~。
「中から潜って抑えてくれない?」
は~い~。
スタート地点から潜ります~。
わ~、真っ暗~。前見えない~。でも目が慣れたら見える~。
ごそごそごそごそ~、ほふく前進~。
…………分かれ道~。どっち側だったっけ~。
きっと左側だ~。そうだといいな~。
曲がったら四角い光が~。出口だね~。と言う事はその前を押さえれば~……何で私、スタート地点から入ったんだろ~。
「ここ~?」
「うん、そこ。何であっち側から入ったの?」
「それは秘密で~す~」
『何で?』って聞き返さないでね~。
「あ、ちょっと! 大地くん!?」
む~? 大地くんって~、あの、いつか私のカッター喧嘩に使った馬鹿俺様だよね~?
あれ~、背中のあたりに違和感~……と言うか何だかちょっと痛い~……何か刺さってるような~……。
「光ちゃん! 大丈夫!? 大地くんのカッター刺さってない!?」
…………なんだって~?
え~い~!
「うわぁっ!? なにゃっ……、何やってんだよ、高山!?」
ダンボール迷路の途中を壊したんですぅ~。
「テメーこそ何やってんだよ? あ~?」
「いやあの……明り取りの小窓つけてみよっかなって……」
「私が中にいたの分からなかったか~?」
「えと、あの……」
「しかもそれ私のカッター。返せ。どういう経路でお前んとこまで行ったかは知らないけど~……刃物の使い方ろくに知らないくせに使うな~」
私もそんなに詳しいわけじゃないけどね~? 人に向けちゃいけないって事くらい常識でしょ~?
「何? どうしたの、ひーちゃん」
「…………何事」
あ~、はーちゃんみーちゃん~。
「あの、大地くんが、光ちゃんダンボールの中に入ってるのに、ダンボール切ろうとして……と言うか、こう、グサッと突き刺して」
突き刺してたの~!? 切ろうとしてたじゃなくて~!?
「ひーちゃん、大丈夫!?」
「……ジージャンの背中、ちょっぴり破れてる……」
う~、気に入ってたのに~。お姉ちゃんのお下がり~。着やすかったのにぃ~!
「大地っ!」
「ぴゃいっ!」
は~ちゃんが起こると怖いよ~? 秋ちゃんの娘なんだな~って思うよ~。
「カッターの使い方も知らないの!? 刃物人に向けちゃいけないって事くらい、幼稚園の子でも分かるよ! 幼稚園からやり直すか、もう刃物を使わないか、選びなさいっ!」
極端じゃないかな~……?
「えぇっ!?」
「……なんなら、せっぷく? あの……お腹切る奴」
やりすぎだよ~。
「はーちゃんみーちゃん~、もう一回怒ったからいいよ~」
「ダメ、ウチのお腹が納まらない」
腹の虫が納まらない~?
「…………もう絶対、刃物使わない。指切」
みーちゃんが小指を差し出して~。
もうとてつもなく怖い思いをしているであろう大地くんが小指を絡めます~。
「指切拳万、嘘吐いたらハリセンボン飲ーます。指切った」
みーちゃん~、ハリセンボンじゃなくて針千本だと思うな~。
「今度やったら、本当にハリセンボン丸呑みさせるからね!」
「はい……」
あれ~!? 針千本だよね~!? ハリセンボンじゃないよね~!? どっち~!?