348 遊んでるわけではないんだよ?
「は~い、じゃあ今日から二時間、子供達に送るようなバースデーカードを作ってもらいま~す」
せんせーい、そんなの習って、いつ使うんですかー。あ、そんなのって言っちゃった。
忍でーす。
学校でーす。二時間目、家庭科の時間でーす。
「厚紙と折り紙配るので、好きにやってください」
先生めちゃ楽だな。材料渡してご自由に?
「え、折り紙配るって、え? 丸々一袋!?」
え? あ、本当だ。
先生から渡された、後ろに回す分も含めて六袋。
十六色十六枚入りの奴。
「残った分は卒業式とかそんな感じのに使ってね」
その頃まで何人残したままにしてられるだろう。
「ひゃー、先生太っ腹!」
デブ! ……じゃないけどね、むしろ細いけどね。おばあちゃん先生。
さて、どうしようこれ。
カード作った事無い、ってことは無いけど……苦手なんだよなぁ。こういう飾ったりするの。シンプルイズベスト! うん、いい言葉だ。
飛び出す仕掛けは知ってるけど、何が飛び出してくるかが問題だし。バースデーケーキ? 太くて短い円柱に、小さな円錐と細い円柱が立ってる図になっちゃうと思うよ。いっそ展開図描いてやろうか。
ペーパークラフト! 作ってみてね! …………ダメかな?
うーん、思いつかないから……折り紙適当に折っておこう。こっちは得意だよ。
純兄もほら、何面体ができるのかは分からないけど、ユニット……パーツ作ってる。変形ラインって、白い筋もはいってる奴。もう絶対やる気ないよ、バースデーカード。
「忍~、これ折って~! お願い!」
「……教えて、じゃなくて?」
「折って~!」
「ま、いいけどね……。どれ? これ?」
リラックスしてるクマのキャラクター。の、顔?
茶色と黄色のを重ねて作るのか……ここを折って、で、ここ折って……たまに切って。
「出来た」
「ありがと~っ!」
のっぺらぼうが出来ました。そりゃね、あんな円らな瞳や可愛い口、折り紙じゃ出来ないし。
「ねぇねぇ高山さん、ハートって折れる?」
ありゃ、花上。
「羽付きでよければ。羽切ったらハートになるよ」
羽無しのハートの折り方覚えたいなー。誰か教えて。
「作って! 四つ!」
「四つ!? ……教えるよ? 簡単だから」
四才くらいの時に教えてもらった奴だし。そん時にも出来たし。
「うーん、じゃあ、教えて」
「ほいほい。まず、真ん中で半分に折って長方形作るでしょー」
四つ作るって、クローバーにでもするのかな? ピンクだけど。
「高山妹、これ意味分かる?」
今度は田中さん? どれー。説明書?
「ここの折り方がよく分かんなくて」
谷折り線と山折り線が交わってる所かな?
「多分ここを……」
折りかけの奴かしてもらって、ちょいちょいと折ってみる。
「あぁ! そういうこと!」
「そういうこと」
「ありがとう。あ、ごめんね花山」
「いいよいいよ。高山さん、次は?」
えぇと、何処まで折ったんだっけ……。
あぁ、ハートの下の角を作ったところまで。
「高山妹ー、ちょっと、キリンの頭折って。訳分かんね。俺体作る」
随分中途半端な状態で緑色のキリンの頭を渡されました。
「わかったー、遅くなっても怒んないでね。
えっと、次はここを開いて潰す。反対側も」
あ、純兄が多面体組み立て始めた。
「忍ー、前さ、三つ首のある鶴作ってたよな。折って!」
なっくん、アンタはカードに何を張るつもりですか。怖いじゃん。確かに折れるけど。三つ首鶴。
「後回しになるよ?」
「いいよ別に」
じゃあ作っとくだけ作っとくよ。折り紙一枚置いてって。
「最後に角をちょっと折って丸っぽくしたら出来上がり」
「分かった、ありがと!」
どういたしましてー。
で、何だっけ。キリンの頭か。
ちょいちょいちょい、出来た。あと少しって所まで来てたんだね。迅谷。
「…………忍、いる?」
ん? 何純兄。
「居るよここに」
「そうじゃねぇよ。これ、いるかって」
おぉ、二十四面体だ。完成したんだ。
見た目丈夫そうで意外と脆かったりするあれだ。
「いらない」
純兄ね、どうしようか困るなら作らないの。
さーて、三つ首の鶴折ろう。
「忍ちゃん! 星の折り方知ってる?」
「大気との摩擦で燃えながら……」
「降り方じゃないの!」
おぉ、よく分かったね。田中さん。
「でも残念ながら分かりません」
「そっか……」
……ってか、どんだけあたしに聞く人多いんだよ!?