339 あれもこれも大好きなトリオです
「しーねぇ、来たよ」
「岳にぃーっ! あれ? 岳にぃは?」
「ひぃねぇーっ!」
わーお、ひっさしぶりだなぁ。死神トリオ天斬剣。
忍でーす。
まだちょっと熱はあるけど、他は大丈夫なんで一階に下りてます。
ストーブの上のさつま芋が焼きあがるのを待っています。
「……しーねぇ、これ、やきいも?」
「そだよー。霊界にもあるの?」
「うん。美味しい」
だよねー。美味しいよねー。
「忍ねぇ、光ねぇ、岳にぃは?」
「友達と遊んでくるって言ってたよ」
「天、斬、オレ岳にぃんトコ行ってくる!」
『バイバイ』
いや、バイバイはおかしくない? 行ってらっしゃいとか、そんな事いわない? 少なくともバイバイは無いでしょ。
「天ちゃん~、斬くん~、こういうときはね~、焼き芋食べといてあげるね~って言うんだよ~」
『焼き芋食べといてあげるね』
素直だなぁ。
……素直だなぁ。いや、二階言う必要は無いけど……素直だなぁ。
「や、焼き芋っ!? ……うぐぁああっ、焼き芋か岳にぃか! うぅうううっ」
「……剣が食べ物と人で迷ってる」
「珍し。私なら絶対バナナだ。んも」
天ちゃーん、そのバナナどっから出てきたの?
「え~、私とバナナだったら~?」
「……ひ、ひぃねぇとバナナ……うぐぁああっ! うぅうううっ」
剣と全く同じ悩み方してるじゃないか。
うん、皐月姉が言ってたもんね。ゼッタイはゼッタイ無いって。……あれ? 矛盾してない?
「斬」
「クスリとしーねぇだったら?」
「うん」
結構喋るようになったよねぇ。斬。
「…………クス……しー……うー」
結局悩むのね。
「じゃ、クスリと純兄は?」
「クスリ」
早いな。
他に比べてすっごく早かったね。
「焼き芋と純にぃだったら焼き芋取るんだけどなぁああっ!」
「バナナとじゅぅにぃだったらバナナ取るのになぁああっ!」
この二人もすっごく早いね。
「嫌われてるな~、純お兄ちゃん~」
うん、あたしも思ったよ。
「焼き芋時間掛かる?」
「もうちょっとだよ。持ってくつもり?」
「うんっ!」
おぉ、首が取れたかと思った。それくらい思いっきり首縦に振ったんだよ、剣は。
「食いモンと岳にぃかぁ、今までで一番難しい問題だなー」
「うん、ペーパーテストだったら『分からない』って書いておけばいいだけの話なのに……」
ちょっと天さん、あんたそんなことしてたんですか。
「……こうなったらしーねぇをクスリに……」
「しないでね!」
すごく、すごく、すごくすごくすごくすごく怖い事言われたよ!? その頭の中で一体何を考えたんだ斬は!
「……やっぱり岳にぃだ!」
「じゃあ剣の焼き芋は……」
「無しにしないで!」
「大丈夫、大丈夫、冗談」
「心臓に悪いよ……」
食べ物どんだけ大事なの。
「うぅうううう、どっちかというとの極限でひぃねぇ!」
「バナナちょっぴりちょうだ~い~」
「一本あげる。いっぱいあるから」
何処にもそんなに沢山持ってるようには見えないんだけどなぁ。
「限りなくどっちでもない。考えるの止めた」
斬だけあたしって言ってくれなかったよ。
「焼き芋焼けたかな~?」
「んー、焼けた焼けた。食べようか」
『わーい!』
剣は分かってたけど……天や斬も焼き芋も好きなのね。
あたしも光も好きだけど! いただきます。