337 七草粥食べて、笑いましょ。これで無病息災!
「光、春の七草言ってみよう」
「芹薺~、御形繁縷仏の座~、菘蘿蔔これぞ七草~!」
さぁ、これを今の名称で言ってみよう。
セリ、ナズナ、ハハコグサ、ハコベ、コオニタビラコ、カブ、ダイコン
言いにくい。
忍でーす。
今日の朝ごはんは七草粥、ぶっちゃけ葉っぱの味よく分かりません。
ちょっとだけど、鰹節とか醤油とかかけてるしね。
「はい、今光の言った七種類の草がこの中に入っていまーす」
「菘と蘿蔔は根っこも入っていま~す~」
あ、ダイコンの根っこ発掘。…………ダイコンだよね? きっと。
「母さん、おかわりってあるよな?」
「足りなかった~? 鍋に入ってるわよ~」
岳、食べ終わるの早いなー。
「よし光、次は秋の七草言ってみよう」
おとーさん、何がしたいのかよく分からないよ。
「萩ススキ~、桔梗撫子女郎花~、葛藤袴これも七草~」
食べた事無いけど。
って言うか、元々秋の七草は眺めて楽しむモンだってさ。
…………眺めもしないや。
「じゃあ光、昔の七草は?」
「お母さん~、お粥おいしいね~」
「おーい」
誤魔化したな。
……あたしも知らないけど。昔の七草。そんなのあったの?
「米、栗、キビ、ヒエ、ゴマ、小豆、蓑米」
「そうそう~、純お兄ちゃんが言った奴~」
光、素直に知らなかったって言いなさい。
「へぇ~、そうなんだ」
「おとーさんも知らなかったの!?」
何で知ってるみたいな顔して光に問題出したの!
「へ? 知らないから聞いたんだ」
……さいですか。
「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥って言うでしょ」
いや、昔の七草知らないからって恥かくことは無いと思うなぁ。
そもそも昔の七草の存在自体知らなかったし、あたし。
「兄ちゃん、そんなの何処で知ったんだよ?」
「お菊さんに教えてもらった」
……あぁ。何か納得。
「誰?」
「お化け。怪談でよく皿数えてる奴」
「あぁ」
おとーさん、意外と簡単に納得するんだね……。
そりゃそうか、純兄が霊的なモノ見えることくらい知ってるし。あたし等が見えるようになったのも知ってるのかな。
「ちなみに今食べてる七草~、お菊さんにいただきました~」
『そーなの!?』
「ん、採り過ぎたからおすそ分けだと」
お菊さん、七草粥の野草自分で採ってるんだ……。
そういやおとーさん、野草にはまってたのに何でこれは採りに行かないんだろ。
「いいなぁ、純も凛も、お化けが見えて」
「父さーん、オレ等も見えるぜ! 大分前から」
去年の……三月くらいから。わぉ、意外と前だ!
「ウソ!?」
「ホントだも~ん~! 今もほら~、お父さんの後ろにガリガリのお爺さん……が……お母さ~ん~!」
怖!? ちょっ、顔が怖い!
「何だよあれ!? 骸骨!?」
おぉ、その表現ピッタリだよ。骸骨に皮貼り付けたような顔、もう一回言うよ。怖い!
「へ?」
おとーさんいいなぁ! 見えてなくて! 純兄助けろーっ!
「ちょっと……そんなに怖がらないで」
「ん、怖がるなって言うなら、まずは何でも良いから食って太れ。
ところで忍、太ったか? なんか重い」
正月は皆多少は太るモンなの。
しばらくしたらまた元に戻るよ。毎年そうだもん。
……でも太ったか? とか言われるのちょっと傷つく。ペーランサボらずちゃんとやろう。
「何? おとーさんの後ろになにが居るんだ?」
「あぁ、心配しなくて大丈夫。貧乏神だから」
『心配するわっ!』
するべきだっ!
「貧乏神が居たら、何とか少ない金で生活しようとするだろ?
貧乏神がどっか行ってもその癖が抜けなけりゃ、金が溜まる」
『…………』
いいのかそれ。それでいいのか。
少ない金で生活する癖がつくまで貧乏神居たら大変だよ。
「たまに餓死する奴が出てくるけど」
ダメじゃん!
「貧さん出てってくれ!」
「あの、ワシこっち! しかも貧は名字じゃない!」
おとーさん……気持ちは分からんでもないけどさ……。
「父さん! 貧は名字じゃねーって! きっと『貧ぼ』が名字だ!」
それはもっと無いでしょうが! 何で名字の最後の『ぼ』と名前の最初の『う』が一つの漢字『乏』に同居してるの!?
「ぴんぽん!」
なんで合ってるの!?
なんか骸骨みたいにやせこけたお爺さんが、腕と人差し指突き出して笑ってる図って怖いね!
「いやー、楽しいなここ」
「居座るのはお断りだからな」
「いやいや、君は知らないかもしれないが、断ってどうにかなるものじゃ無いからねぇ」
え゛。
「ふぅん? 貧乏神の弱点ってなんだったっけ」
「え? 幸せな笑いとか、強運とか、死神とか、神とか、無邪気なお化けとか、囲炉裏の火に、健康な働き者」
弱点意外に多いね。そしてきっと、弱点ぺらぺら喋っちゃう事も弱点だよね。
「あはははは~!」
「光、わざと笑うのは違うだろー」
ちょっぴり引いたけど、貧乏神。
「岳、意外と効いてるみたい」
「マジで!? あっはははは、貧乏神意外と弱ぇー!」
ちょっと無理してるっぽいけどね。岳も。
あ、おとーさんも笑い始めた。おかーさんも。
「…………ぐすん」
涙ぐんで出て行っちゃったよ貧乏神。
笑う門には福来るって本当だねー。いや、福の神は来てないけど。
「……ちょっと可哀想だったかな~?」
「大丈夫よ~、貧乏神は意外にタフなんだから~。千年は生きるわよ~」
わぉう。
「貧乏神って生きてるもんなんだな……」
「神ってつくけど、お化けみたいなモンだしな。 ……あ。夏ん家入った」
「え~っ!? はーちゃんが~!」
「秋ちゃんが~!」
とか慌てながら言いつつ、あんた等全然動かんな。光とおかーさん。
「あ、あっさり出てきたぜ」
「……ん、あっこにゃ笑い上戸が居たな」
なっくんか……。
なっくんだけじゃなくても、はーちゃんも冬くんもよく笑うしね。
「あー、冷めてもおいし」
七草粥。
「ん。同意」
「オレもっかいおかわりしてこよ」
「私もおかわり~!」
なんでだろう、もちが食べたくなってきた。