332 ちゃんと仕事やってんです……か? コレ
『指令先:第一部隊 班無所属 アラン・バブカ
氏名:ジジ・ベイカー
世界:ゲイム界
国:センター王国
職業:魔王を倒しに行く勇者一行の魔法使い』
職業名魔法使いでよくないか、と思ったのは俺だけじゃないはずだ。
死神になって多分七年くらい、第一部隊で『寿命なのに何故か死なない奴を死なせに行く』仕事をしているアラン・バブカだ。
読んでいたのは指令書……またこれから仕事だ。
目の前に座るは第一部隊をまとめる部隊長。彼が口を開く。
「今回の仕事は、いくらお前が優秀だと言っても一人では難しいと思われる。
何しろ、前に四人が失敗した仕事だからな。お前が失敗すれば、次は第十三部隊に回される」
『第十三部隊』……死神の中でも一番扱いが難しい連中の集まりだ。
彼等は以前に何かしら問題、事件と言ってもいい。それも冥界に送られてもおかしくないような大事件を犯しているのだ。
しかし、能力だけはずば抜けて素晴らしいので冥界送りは何とか免れている。
彼等に回される仕事は全て、死神の基礎五部隊で五度以上失敗した仕事……。
「すみません。アラン・バブカさんはいらっしゃいますか?」
突然戸が開き、死神の中でも、始めてみる程若い男――少年と言ってもいいだろう――が言った。
「アランは俺だが。君は誰だ?」
「第十三部隊、高山純です。アランさんの仕事を手伝うよう指令が回って来ましたので、参りました」
………………高山純か。どこかで聞いた名前だな。
いや、そうではなくて、第十三部隊?
「何かの間違いだろう」
「その指令書、ちゃんと読みましたか?」
最初の方しか読んでいないが……でもまさか、第十三部隊の少年が手伝うような事は……。
『その他:いくら貴殿が優秀だとは言え、恐らく一人では難しいと思われるので、第十三部隊に手助けを要請しておく』
書いてあった!?
「書いてあったみたいですね」
どうせ俺が失敗すれば、いや、絶対しないが万が一したときは、第十三部隊に回される仕事に何故第十三部隊から助っ人が来るんだ? おかしいだろう、どう考えても。
「……何をした?」
「ん? 何やらかして第十三部隊に居るか、ですか?」
「そうだ」
「売られた喧嘩……決闘って言うんですかね? 片っ端から買って、決闘らしく相手全部冥界に送ってたら怒られまして。俺悪くないですよねぇ? 喧嘩売って来たの向こうなんですよ?」
俺に聞かれても困る……。
「アラン、安心しろ。彼は第十三部隊でも七番目位には常識がある」
フォローになって無い気がするのですが?
「一、二、三……違います、九番目です」
「君も訂正しなくて良い!」
しかも余計に悪くなってるじゃないか!
「純です。それより、さっさと仕事行きましょうよ。残り少ない生命保存期間を無駄にしたくないんで」
「……生命保存期間中なのか?」
死神の過ち等で命を落とした場合、五年生き返ることができる……とは言っても、実体化するだけなのだがな。死神の中にも居るとは知らなかった。
「あと百日無いんですけどね。
まぁ、そんなことは置いといて、早く行きましょう」
「あぁ。そうだな」
俺もだらだらと喋っているのは好きじゃない。
行先はゲイム界、センター王国だ。
ここでは、魔王が魔物を放ちまくって王国征服を企んでいるらしい……。小っちゃいな魔王。世界征服位言ってみろ。
それを阻止すべく、王が勇者を異世界から召喚、ちょっと待て、コイツも駄目だろう。元の世界に戻してやらねば……文化の狂いが起こる。
そして、超絶美人の女剣士アイヤ、力自慢のマッチョ……あれ? コレ名前なのか? そして既に寿命を迎えているはずの魔法使い、ジジ。
彼等を仲間にした勇者タツキが魔王を倒すよう、王から命令を受けてまず五億六千万を前金として要求&ゲット、さらに仲間全員に十億の生命保険をかけた後出発……何だコイツ!?
「凄いですね、アランさん。
この勇者、立ち寄った村で不法侵入やら強盗やら滅茶苦茶やってますよ。見習お」
「見習うな!」
「本当にする訳ないじゃないですか」
馬鹿にしたように俺を見る、このナマガキを一度殴ってもいいだろうか?
いいな? よし。
「フンッ」
不意打ちで、さらにこの速さの拳をかわせるか。
俺が得意なのは主に妖術だが、体術だって遅れはとらん。
「ん、残念でした」
……くそ、受けられたか。
「わざわざ掛け声かけてくれるなんて親切ですね」
「残念だったのはそっちだ」
このまま足払い!
……跳んで避けられた。
「わざわざ予告してくれるなんて親切ですね」
「チッ」
この馬鹿にしたように口角を上げる笑みが、嫌いだ!
「マンレイタイシュ・レンレ……」
妖術でその笑み、消してやる!
「ん、魔法ですか」
…………逃げた!?
やたらと足速いなアイツ! くそっ。間に合わん!
すぐそこは街、勇者たちもそこに居るだろう。
しかし……ジジとか言う魔法使いを消す前に、アイツを消さんと俺の気がすまん!