331 あけましておめでとうは神社にて
紅白は紅が勝ちましたねー! 七年ぶりの紅組優勝だよ!
今朝は毎年より光の機嫌が良かったよ。うんうん。
あけましておめでとうございます。
忍でーす。
新年明けて、おせち食べて、神社に初詣に来ています。
兄妹四人と廉也くん、疾風、おばーちゃんと一緒。他の人達は家に居るよ。おとーさんなんかまだ寝てた。
で、長い行列できてるので並んでます。
「あ~、焼き芋売ってる~!」
「あー、去年も売ってたね」
「旨そー」
って言って、純兄をじー。なぜなら財布を持ってるからです。
「買っといで。千円あげるから、買えるだけ」
「え、いいの? 廉也くん」
「おぅ」
「テメェ等ぁ、俺には遠慮ねぇくせに」
純兄は無視しよう。
『ありがと!』
さぁ買おう!
七百グラム以上入って千円って書いてある。おぉー。
その『七百グラム以上』で、四本買えました。
「おいし~っ」
「はい、廉也くん。疾風も食べれる?」
「ちょっとずつな」
「まー!」
まー? マンマの略とか? 残念ながらご飯じゃありません。
「母さん、焼き芋食べるか?」
「おぉ。旨そうじゃな」
旨いよー。金色だよ、この中身。
「はい、光。半分」
「わ~い~。……岳お兄ちゃんの方が大きくない~?」
光、隣の芝は青いとか言うでしょ。そう見えるだけだよ。
「忍、俺のは?」
「えっ!?」
「何驚いてんだよ。何自分だけ一本食えると思ってんだ」
冗談だよー。はい半分。
でもおばあちゃん、一人で一本食べてるよね? 一番大きいの一人でペロリだよ?
あれ!? もう食べ終わってる! 皮の一枚も残ってないよ……。
「この皮おいしいよ~!」
「中身もらってやろーか?」
「それはダメ~!」
もう茶色い皮部分は手に当る所以外全部食べられて、金色の中身が裸で立ってるんだけど。光の芋。
「甘いねぇ、疾風」
「ま!」
「疾風くん~、旨いって言うんだよ~」
「んまんま、うま」
お、疾風が『旨い』を覚えた。
食べ終わる頃には拝殿が目の前に。結構お腹いっぱいになるよね、芋って。
お賽銭入れて、鈴鳴らして、二礼ニ拍手一礼。神社ですから。
「さ~、おみくじだ~!」
「いえー!」
ぶっちゃけ初詣ってこっちの方がメインな気がする。あたしだけ?
「あ、忍と純くんだ~。あけましておめでと~!」
「ん、おめでと」
「おめでとー、桜。来てたんだ」
「そりゃ来るよ~。合格祈願、合格祈願! 忍もそれお願いしたんでしょ~?」
うん。白銀高校受かれーって。ついでに滑り止めの私立受かれーって。
「さ~、質問です」
うん?
「年が明けて最初にしたことは?」
「寝た!」
『あけましておめでとう』は言ってから寝たんだけどね~。
はてさて、いつの間に寝たんだろ。朝起きたらベッドの中にいたけど、あたしはそこまで言った記憶がない。
……って事は。
「純くんは?」
「リビングで寝やがった妹二人を運んだ」
睨まれました。
「岳はちゃんと起きてたのになぁ、忍?」
「さ、桜、おみくじなんだった?」
こういうときは話をかえるに限る。
「これからだよ~」
「じゃ、一緒に行こ」
「お~」
……巫女さん忙しそうだ。
おみくじだけじゃなくて、お守りとかも同時並行で売ってるよー。
「純お兄ちゃん~、百円~」
「オレも」
「あたしも」
「わたしも~」
「ん、光、岳、忍」
桜さん、何で貴方まで手を差し出してるんですか。
あれ? ちょっと待って、差し出された手、六本もある。全部右手で六本あるよ?
「あれ? オレ等にゃくれねーのか?」
「あけましておめでとう、清、篠。お年玉くれんのか?」
あぁ、清と篠か。
「お年玉は年上が年下にくれるものだぞ。というわけで、くれ」
純兄のほうが誕生日早いから年上だと。あ、じゃああたしも貰わなきゃ。ナイス篠。
「違ぇな。大人が子供にくれるモンだ。残念ながら俺も中学生で子供だから無理」
「純は大人っぽいから大人でよくね? くれ」
あ、清の手がはたかれた。
「いい音しました~! これは痛いでしょう!」
なんか桜の実況久し振りに聞いた気がする。
「お姉ちゃん~、見てみて大吉~!」
「おー、良かったねー」
あたし、一昨年に一回引いたっきりなんだけど、大吉。
…………
ほら、今年も吉だった。
大でも小でも中ですらないなんて中途半端だよ!
ま、いいけどさ、普通に良いでしょ、吉って! ね?
「わたしも大吉だよ~。おそろいだね、光ちゃん」
「うん~」
「あ、オレ中吉」
中吉と吉ってどっちのほうがいいの?
「あたしは末吉だ。……チッ」
「篠のチョップ~! 清くんの眉間に突き刺さりました~!」
チョップって刺さるものだっけ。
……眉間を押さえて蹲ってる……声にならないほど痛いんだね。
「岳ー? あれ、岳何処行った……うわっ」
「姉ちゃぁん……凶だった」
あぁ……そっか、それでそんなに暗ぁくなっちゃってるのか。
「ま、良かったじゃん、大凶じゃなくて!」
「大凶だったんだよ!」
しまった。余にボソッと『大』を言ってたから聞き取れなかったんだ。
慰めが慰めにならんかったと。ドンマイあたし!
「みーちゃんだ~! 私大吉だったよ~!」
「美代、吉」
仲間だ!
「村田くんはなんだったの~? おみくじ」
「小吉」
「……あ~。そうなんだ」
「何だよその反応!?」
かなり冷めた反応だったね……。
「純くんはなんだったの~? あれ? 純くんは?」
え……あ、居た。テントのところで甘酒貰ってる。
で、岳に渡してる。岳はそれを飲んで……舌火傷したな、あの反応は。
あたし達もそっちに移動。
「純お兄ちゃん~! 私も飲んでみたい~」
「ん」
あれ? 甘酒渡してる男の人……サンゴの兄ちゃんじゃん。またバイトかな?
もうバイトの兄ちゃんでよくないかあの人。
「……何か変な味~」
「そうか? 旨ぇのに」
とか言いながらあんまり一気に飲めない純兄でした。あたし達兄妹皆猫舌だもんねー。
「純兄、あたしもちょうだい」
……飲んでみました。熱い、甘い、変な味。
「もういい」
「忍もか」
「純くんはおみくじなんだったの~?」
「引いてない。金無駄」
……百円なのに。
「あ、居た居た」
廉也くんだ。
「おみくじなんだった?」
「凶」
ドンマイ!
「疾風くんは~? 子供みくじ引いてたよね~」
「大吉」
「だー!」
運吸い取られてたりして。
「……子供みくじって凶入って無さそうだよなー。ってか、大吉いっぱい入ってそうだよなー。よし、兄ちゃん百円くれ!」
「アホか」
ばっさり。
あけましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします!