330 話は短く蕎麦は長く
「今年も終わりだー」
「まだあるよ~。三時間三十数分~」
「三時間三十数分!? 三時間半ちょっとしかねーじゃん!」
そんなことより、お腹すいた。ご飯まだー? 蕎麦まだー?
……あ、そんなことって言っちゃった。
いやいや、別にお腹を満たす事優先で言ってるわけじゃないからねー。単にお腹がすいただけだからねー。
「ねぇ純お兄ちゃん~、今年紅白どっちが勝つ~?」
「さぁな」
あ、流した。
「廉也くん」
「白だよきっと」
「ねぇお姉ちゃん~」
「紅じゃない?」
「ね~」
……紅って言ってほしかったんだね。
「さ~、お蕎麦~!」
やったぁ!
……なんかちょっと恥ずかしかった。忘れて?
頭の中まっさらで新年迎えましょう。さぁ、一二の三四で忘れてください。
「おいし~。……あれ~? この人誰~?」
知らない。まぁしょうがないよ。普段からそんなにテレビ見ないし。
あれ、でもどっかで聞いたことのある曲。何処だろう。
「あちっ」
「熱っ。ちょっと岳、かかった!」
熱くてこぼすのは勝手だけど、巻き込まないでください。
あたし冷たい?
だって熱いんだもん。冷やすのが普通でしょ。意味が違う? ほっとけ。
「ごめん姉ちゃん」
「許す」
謝られたら許さないとね。向こう困るよ。
「ねぇ、純兄。年越し蕎麦の意味ってさ」
「細く長く生きれますように」
「そうだよねぇ。でもあたし、太く短くの方がいいや」
「……その短くってどんくらいだよ」
言ったら、それ充分長ぇよって言われそうだから言わない。
「太く長く~、ならうどんだよね~」
いや、あたしうどんより蕎麦の方が好き。
「紅白って生で見てみてーなー」
「これ生放送だけど」
「そうじゃなくて」
うん、分かってて言った。あたしも見たいけど、起きてられる自信がない。
最後までは見れるんだよ? でもその後、あっという間に眠りにストン。
で、元旦に純兄に文句言われる。『俺が運ばなきゃなんないの分かっててやったろ』って。確かに分かってるけどさ。でも最後まで見たいしー。
うん、今年も純兄に運んでもらおう。やっぱり見てたい。
……蕎麦おいし。
んと、皆さん良いお年をー。
あたしは紅白と蕎麦に集中いたします。
そういう訳です。良いお年を!