329 ちと騒がしくなりますよー
「にゃーにゃ」
「それ、熊のぬいぐるみだぜ」
「わーわん」
「だから、それ熊だって」
岳だー!
従弟の疾風が来たんだけど……。覚えてる奴居るか?
ほら、さいっしょの最初、第4話から第8話で、カレー作ったことがあっただろ?
あの時カレーの中にぶち込んだ離乳食。あれを忘れて行ったのがこの疾風だ。ま、99%の奴は覚えてねーだろな。
一歳半、結構喋るんだなー。
「忍~! ごは~ん!」
あー、姉ちゃんまだ勉強してたんだ。すげぇ。
兄ちゃんはそこでルービックキューブやってるってのに。うわ、もうほとんど揃ってる。これはこれですげ。
「純たけ光もご飯よ~」
なんでオレだけ竹なんだよ! なんで『る』が削られてるんだよ!
「疾風くん~、ご飯だって~」
「はやくん、おいでー、マンマよ、マンマ」
梨加ちゃん。母さんの弟、つまり叔父さんの奥さんで、疾風の母さん。
この人を一言で言うと、若い。まぁ本当に若いんだけどさ、母さんに比べればの話。
「マンマァ!」
おー、走ってった。あ、こけた。
「大丈夫~?」
あ、自分で立って、光には目もくれず走ってった。
ドンマイ光。
「お母さ~ん~。私疾風くんの隣がいい~」
「ん~、じゃあお姉ちゃんの所に座る~?」
「座る~!」
姉ちゃん何処座るんだろ。どっかに出張?
ま、いいや。オレはオレん席に座ろ。
そういや兄ちゃんも何処座るんだろ。兄ちゃんの席に梨加ちゃん&疾風が居るんだけど。
「わー、おでんだー。あれ? テーブルの上に鍋が無いのは……あ、疾風が居るからか」
疾風の手に届くとこに置いてちゃあぶねーもんな。
「あたし何取ろうかなー」
オレはじゃがとこんにゃくと人参、あ、卵発掘、ゲット。こんなでいっか。
どーせセルフサービスだし。また取りにくりゃいっか。
「岳、貸して」
姉ちゃん、言われなくても貸すってお玉くらい。
おー、じゃがうめぇ。ほくほく? うん、そんなだ。
あれ、結局姉ちゃん何処座るんだろ……何の疑問も持たずにあっさり父さんの席……俺の斜め隣に座った。あっさりすぎだろ。
母さんも自分の席座ったから……後は光の席しか空いてねーな。
『かーんぱーい』
何か向こう……さっきまで疾風が遊んでたリビングで、山口の婆ちゃんと叔父さんの廉也くんビール飲んでるし。
何気に兄ちゃん巻き込まれてるし。ルービックキューブは? あ、完成して転がってやんの。
「純、飲むけ?」
「ん? 貰う」
貰うなよ! 未成年だろ! ……って、夏に良雅くんに言ってたじゃんかよ。あれ? これは姉ちゃんだ。兄ちゃんはなんも言ってなかった。
「飲むな、中学生だろ」
あ、廉也くん、勧めたくせに兄ちゃんはたいた。
「んじゃ勧めんなよ」
「冗談に決まっとろうが」
「絶対に決まってることは無いって言ったのは廉也くんだろ」
「いつの話!?」
「ん……十何年か前。忍が、廉也くんが言ってたって香ちゃんが言ってたって言ってた」
滅茶苦茶あやふやだなおい。なんでそんなの覚えてんだよ。
「まぁま、純も十五じゃろ? ちょっとくらい大丈夫じゃ」
「母さん、勧めんなよ」
婆ちゃん……。
「良雅も十五から飲み始めた」
そなの? 知っててほっといたんか婆ちゃん!
「岳、岳! おでんの中大変なことなってるよー」
「え?」
あ。
兄ちゃん等の方見てたから、卵の黄身が全部汁の中に溶けた……。
「姉ちゃん。黄身だけくれ」
「無理」
チッ。即答だぜ即答。